では次にヴィンテージを選びたいんですけど、こちらはだいぶマニアックなセレクトですよね。いきなりプゾーのCal.260とか、オメガの30mmクロノメーターとか、IWCのCal.89とか、これじゃあ、ほとんど暗号ですよ。今回はあまり〝具のハナシ〟に寄らないセレクトのほうが嬉しいんですけど……。
広田 エポックメイキングなものから選んでいくとそうなっちゃうんですよ。IWCのCal.89は単純に僕の好みですけど、現代に繋がってくる技術で、商業的にも成功を収めたモデルじゃないと永久定番とは呼べないし、そうなると、ある程度量産されてないとダメ。
名畑 たしかにエポックメイキングな先駆者だよね。オメガの30mmなんて、シンプルなんだけどクロノメーターで、天文台のクロノメーターコンクールでも成績を残して、高精度をベーシック機でアピールしたんだから。そういう意味ではユニバーサルもいいよ。
広田 ポールルーターもトリコンパックスも素晴らしい機械ですよね。しかも普及機。
名畑 マイクロローターの先駆者だよね。ピアジェにもあるんだけど、ユニバーサルはずっと良い。まったく高級な機械じゃないんだけどしっかりしているし、手の届くコンプリケーションの代表格。トリプルカレンダークロノグラフだって、トリコンパックスが出るまでは超高級ブランドしか作ってなかったわけだよ。それを我々でも手の届くレベルに降ろしてきた。エリック・クラプトンだって、そんなユニバーサルが好きだったんだから。
広田 ケースの話をすれば、ポルシェデザインのチタンケース。オーシャン2000かチタニウムクロノか、そのあたりを推します。どちらも実際にはIWCが作ったんですけど。
名畑 ポルシェデザインのチタニウムクロノって、モダンクロノグラフの先駆者だと思うんだ。それは素材の話じゃなくて、もっとデザイン的な意味で、現代に繋がる流れを作ったモデル。いまだにポルシェ的なデザイン思想って、ジンとかベル&ロス、あとはブライトリングにも受け継がれているわけだし。
エポックメイキングとは、ある機構を普及させた功績と捉えて良いのでしょうか?
名畑 そうそう。ストーリーって大事じゃない? そもそも腕時計自体が、20世紀初頭にはなかなか普及しなかったわけですよ。軍用には少し作られていたけど、それを兵士が戦場から持ち帰って普及させたっていうよりも、ある飛行家の求めに応じて、時計メーカーじゃないカルティエが作ったっていうほうがずっと美しい。セイコーはもっと本気だよね。例えば、ヘリウムエスケープバルブ付きのダイバーズウォッチが必要なプロダイバーなんて、世界に1000人もいないわけ。なのにセイコーは、時計にバルブを後付けするんじゃなくて、ブチルゴムの特殊なパッキンを作ってさ。そもそも時計の中には絶対にヘリウムを入れないんだって、かなり本気でしょう。〝ツナ缶〟って呼ばれている外胴ダイバーって、デザインの裏にそうした本気のストーリーがあるからこそ愛されている。
広田 セイコーだったら僕はロードマーベル36000を推したいなぁ。最近、あのハイビートのシリーズが好きなんですよね。
名畑 広田君、絶対にそれ言っちゃダメだよ。プアマンズGSなんて言われているけど、ロードマーベル36000こそ、我々に残された最後の砦なんだからさ。これでヘタに価格が上がっちゃったら、我々みたいな時計マニアが気軽に遊べなくなっちゃうじゃない?
広田 そうか! じゃあ、ここはやっぱり初代ツナ缶で! でもヴィンテージ編で選んだ10本の永久定番モデルって、〝時計が時計であることを求められた最後の時代の傑作〟なんだと思いますよ。
OMEGA
スピードマスター
1. 1957年に発表されたスポーツクロノグラフの傑作。写真のサードモデル(生産は64年〜)がNASAのテストを生き残り、〝ムーンウォッチ〟として公式採用された。なおサードモデルはストレートラグを備える最終型。市場価格は100万〜120万円。
CARTIER
サントス リスト ウォッチ
2. あまりにも有名な腕時計の始祖のひとつ。飛行家アルベルト・サントス=デュモンのために製作されたプロトタイプの完成は1904年。写真は1915年頃に製造された初期モデルのひとつで、市場価格は計測不能。
IWC
Cal.89搭載モデル全般
3. 名設計者アルバート・ペラトンの手によるセンターセコンド専用機がCal.89。シンプルな構成ながら高精度を誇った。写真はマークシリーズ初期の傑作「マーク11」。イギリス空軍向けに開発され、後に市販された。市場価格は100万〜120万円。
OMEGA
30mmクロノメーター全般
4. 天文台クロノメーターコンクールの規定で、腕時計用と認められるムーブメントの最大径が直径30mm。そのギリギリを狙って、シンプルな構成で高成績を何度も記録した。写真のようなシンプルなスモールセコンド機の場合で、市場価格は40万〜60万円。
PORSCHE DESIGN
チタニウムクロノ
5. IWCが製造を担ったフルチタンケースのクロノグラフ。ケースと一体化したプッシャーがスタイリッシュだ。ETA7750を搭載する〝縦3つ目〟レイアウトでの高い完成度を示し、後年のジンやベル&ロスにも影響を与えた。市場価格は60万〜80万円。
PORSCHE DESIGN
チタニウムクロノ
6. 1952年に登場した初代ナビタイマー。旧クロノマットに搭載された回転計算尺の進化版を搭載し、パール状のグリップを設けた回転ベゼルと連動。ブランドロゴはなく、かわりにAOPA(航空協会)のロゴが入る。市場価格は120万〜150万円。
© Diode SA - Denis Hayoun
JAEGER-LECOULTRE
メモボックス
7. 1950年〜70年代にかけて製造された機械式アラームウォッチ。ケースバックを叩いて振動を伝えることで、水中でもアラームの使用を可能とした。ネーミングは「Voice of Memory」に由来。市場価格は20万〜50万円。
SEIKO
600mダイバー
8. 飽和潜水に対応するダイバーズウォッチとして開発された特殊モデル。このスペックが後にJIS規格が定める2種潜水時計の標準仕様となった。海外市場でも人気が高く、〝ツナ缶〟の愛称で呼ばれる。市場価格は60万〜80万円。
UNIVERSAL GENEVE
トリコンパックス
9. 1970年代のクロノグラフ。12時位置のインダイアルに、ポインターデイトとムーンフェイズを同軸配置する。市場価格は25万〜45万円。
PATEK PHILIPPE
永久カレンダー搭載クロノグラフ
10. 1941年に発表された初代「永久カレンダー搭載クロノグラフ」。1954年までに281本しか生産されず、市場価格は約1億〜1億2000万円。そのうち、たった4本しか存在しないSSケースのRef.1518には2016年に約12億円の値がついた。
*Masaharu Nabata*名畑政治
時計専門ウェブ『Gressive』編集長
1959年、東京都出身。94年からスイスの時計フェア取材を継続。オメガやセイコー、さらにクロックや関連書籍の蒐集家でもあり、その経験的知識を下敷きにした『THE OMEGA BOOK』(徳間書店)はオメガマニアたちのファーストバイブルだ。
*Masayuki Hirota*広田雅将
時計専門誌『クロノス日本版』編集長
1974年、大阪府出身。『2ちゃんねる』のコテハンから時計界の重鎮にまで成り上がった立志伝中の人。時計メーカーや販売店向けにも講演活動を行う業界ご意見番。英国時計学会員、ドイツの時計賞『ウォッチスターズ』審査員。通称ハカセ。
Words 鈴木裕之 Hiroyuki Suzuki
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January 05, 2020 at 07:36AM
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