クルマ好きにとって半ば「常識」のようにも語られる、「セダンといえばトヨタ」「本気度の高いSUVを揃えるのは三菱」といった事柄たち。
しかし、対象となるモデルの数がそのメーカーの全モデルに対してどれほどの割合を占めるかを検証することで、「セダンのラインナップが豊富なメーカーは?」「最低地上高200mm超のSUVを多く揃えているメーカーは?」…これらについての意外な事実が見えてくる。今回はそれをご紹介したい。
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※本稿は2020年3月のものです。ベースモデルが存在する場合のハイブリッド車は特別な例外を除き、1モデルとしてカウントしています。レクサスの「F」モデルはベースモデルとの差が大きいため別モデルとしてカウントしています
文・写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2020年4月10日号
■Part 1 「セダンの王国」はトヨタじゃない?
セダンを多く抱えるのはトヨタ。そのイメージはモデルの数だけ見れば間違いではない。モデル数=9は圧倒的だ。
■[データ1]各メーカーセダンモデルの全モデル数に対する比率

が、セダンモデルの数が全モデルに対してどれだけの割合を占めるかで見ると……、21世紀の「セダン王国」はじつはホンダとなる。
「何言ってんだ? レクサスのほうが比率高いだろ?」と思うかもしれないが、レクサスはプレミアムカーメーカーでラインナップに偏りがあるため、カジュアルに比べるのは難しい。
一方のホンダは素晴らしい。登録車全モデル数が16しかない(シビックはセダンとハッチバックを別モデルとしてカウント)のに、6モデルもセダンを揃えている。

正直、ドレもあまり売れてるイメージがないが、今回は販売状況は加味しないので問題ない。よかったよかった。

■Part 2 ならば「SUVの王国」は? →スズキ、侮りがたし!
「SUVってか、RV王国といえば三菱だろ!?」。
バブル華やかなりし頃からのそのイメージは、現在でも正しい。モデル数こそトヨタに負けているが、SUVモデルが全モデルに占める割合を見れば、圧倒的に三菱が王様だ。
■[データ2]各メーカーSUVモデル(登録車)の全モデル数に対する比率

が、ここで注目してほしいのが、2位に入ったスズキだ。ジムニーシエラやエスクードは当然として、ほかにイグニス、SX4 S-クロス、クロスビーも、最低地上高が180mm以上あるためSUVとした結果、こうなった。

イグニスがSUVかよ? という声もあろうが、最低地上高=140mmのC-HRがSUVヅラしていることを考えると、含めちゃいけない理由のほうがわからない。

■Part 3 最低地上高200mm以上! 「本気SUVの王国」はどこ?
SUVで未舗装林道に分け入って遊ぶような使い方を考えているなら、最低地上高200mm超の本気モデルを選びたい。
で、そんなガチなSUVを多く揃えるメーカーを探したところ、驚かされたのがスバルだ。
■[データ3]各メーカーSUVモデルに対する最低地上高200mm以上車の比率

なんとSUVとして用意するXV、フォレスター、レガシィアウトバックの3車すべてが200mmを確保している。フォレスターなどは220mmと、本気も本気、大マジだ。
一方、逆に驚かされたのがRV王国のイメージの強い、三菱。SUVモデルは数多いが最低地上高200mm超えはRVRの1台のみ。パジェロの国内消滅が痛いのう……。

■Part 4 国内市場は大事だぞ! 5ナンバーの王国は? → 日本に冷たい イメージのあの会社が?
下の表をご覧いただければわかるように圧倒的なのはスズキ&ダイハツだが、ぜひご注目いただきたいのが日産。
■[データ4]各メーカー全登録車数に対する5ナンバー車の比率

全モデルのうち30%弱が5ナンバーということで、持たれがちなイメージほどには日本市場を軽視してないといえる。マーチ、キューブ、ノート、NV200バネット、そしてセレナ……。含まれているメンツには問題がある。

40%弱が5ナンバーという三菱も意外だろう。ミラージュ、i-MiEV、デリカD:2。こちらもメンツに問題がある気がするが、まぁしょうがない。

レクサスの0%には潔さが感じられて、好感が持てるね。
■Part 5 両手両足フル活用! MT車の王国
スポーツイメージが根強く残る日産とホンダに期待されたが、結果は圧倒的にマツダ。
■[データ5]各メーカー全登録車数に対するMT設定車の比率

登録車10モデル中8モデルにMTを設定するというのは、アッパレ以外の何物でもない。誰だ? 単に輸出仕様に設定があるからだろとか言ってるヤツは? 浣腸するぞ、思い切り。
やや情けない結果となったのがホンダとスバル。登録車でMTが用意されるのはホンダではシビックハッチバック。スバルではBRZのみ。タイプRとWRX STIの不在がデカい。
健闘が光ったのはスズキ。MTが設定されるのはスイフトとスイフトスポーツ、ジムニーシエラの3車だが、シエラの5MT設定に、メーカーと、それを希望するユーザーの本気が見えて小気味いい。


トヨタはもっと比率が高いかと思ったが、期待したほどではなかった。もっと頑張れ。
■Part 6 軽だって3ペダル! MT軽自動車の王国
■[データ6]各メーカー全軽モデル(乗用)に対するMT設定車の比率

ジムニーとアルトワークスを擁するスズキが強いのは簡単に予想がつくが、惜しかったのはホンダ。6速MTが用意される商用車、N-VANが入れば、もう少し比率が上がったはず。
と思ったが、商用車アリにすると、スズキとダイハツも軽トラとかがバンバン入ってくるから、やっぱりぜんぜん惜しくないな、うん。
ま、ホンダはMTが用意されると噂の次期N-ONEに期待しましょう。それまではS660で踏ん張れ。

ちなみにトヨタの「1」はコペンGRスポーツの数字。どんな勝負であれ、完全敗北はしないという王者の意地が勝手に感じられてしまって、怖さすら覚えたね、ぼかぁ。
■Part 7 小さくてもパワフル! 小排気量過給器の王国
■[データ7]各メーカー小排気量(〜1.5L)過給器設定車の対全登録車比率

日本ではハイブリッド勢のほうが優勢の感があるが、やはりクルマ好きとしてはターボ独特の加速感に惹かれる。
1.5L以下としたのは、現状1.6L以上のターボがパワー志向であり、2Lになると小排気量感がないから。一応、考えているのだ。
強いのはやはり小型車&軽自動車メーカーの感が強いスズキ&ダイハツ。それ以外ではホンダが頑張っている。その勢いで海外仕様にはある1Lの直3ターボを入れてほしいが、なぜか入れてくれない。

日産の「1」はノート。e-POWERの陰で忘れられがちだが、1.2Lのスーパーチャージャー搭載車がある。正直、本企画担当もこのページ作るまで存在を忘れてた。

* * *
■まとめ
いかがだっただろうか。アナタの頭の中にあるメーカーに対するイメージと実際は一致していただろうか。「そうだったのか」と意外に思うデータも少なからずあったと思う。
変わらないものなどない。それは自動車業界だって同じこと。かつて「走りのつまらないクルマばかり」とのイメージを持たれていたトヨタは、今では最もクルマ好きをワクワクさせるメーカーに変貌している。
2020年4月現在、大変な状況下ではあるが、今後も各メーカー鎬を削って新しいクルマの世界を創造していってほしい。
■【番外コラム】メーカーの販売力を考えると意外に売れてるクルマ
販売台数だけを見るなら大メーカーが有利で当然。そのメーカーの販売力を考慮した上での人気車を探す。
(TEXT/渡辺陽一郎)
クルマの売れゆきは、商品力と販売力で決まる。販売力が弱いわりに、好調に売れるクルマを取り上げたい。
筆頭はフォレスターで、2019年には1か月平均で約2700台を登録した。ハリアーと同等だが、スバルの国内店舗数は約460カ所と少ない。ハリアーを売るトヨペット店の約1000カ所に比べると半分以下だ。C-HRなどを扱うトヨタ全店の4900カ所に比べると10%を下まわる。

つまりスバルは少ない店舗で効率のよい商売をしている。しかもスバル車の価格は大半が250万円以上だ。1店舗当たりの車両販売による売り上げも多く、国産車ではレクサスに次いで2番目になる。
そのレクサスではUXが堅調だ。2019年の登録台数は1か月平均で1200台と少ないが、店舗数も全国で約170カ所に限られる。したがって1店舗平均では1カ月に約7台を売った。仮にUXをトヨタ全店が1か月に7台売れば、3万4300台に達する。レクサスは、ユーザーに対して良心的か否かを除いた販売効率だけを見ると、とてもオイシイ商売をしている。

ロッキーは2019年12月と2020年1月に、C-HRと同等の3000台以上を登録した。トヨタブランドのライズに比べると約35%だが、軽自動車中心のダイハツブランドが扱う小型車では圧倒的に多い(ブーンはパッソの22%)。

販売店では「以前に比べると軽自動車税が高まり、自動車税は小排気量車を中心に安くなった。その結果、以前の軽自動車税は1Lエンジンの自動車税に比べて年額2万2300円安かったのに、今の差額は1万4200円に縮まった。
今後軽自動車の販売台数が下がる心配もあり、1Lエンジンのロッキーやトールに力を入れている。ブーンは伸び悩むが、TVのCM放映など宣伝は活発に行っている」と述べた。
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April 19, 2020 at 07:00AM
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