昨秋、東京に次ぐ国内2軒目となる「パーク ハイアット」が、京都・東山に誕生した。高台寺に隣接する高台の斜面に佇み、周囲の景観に配慮した低層建築で設計されている。由緒ある料亭「山荘 京大和」とのダブルネームである通り、古き良きものと新しき良きものが婉然と共存。“ホテル”ではなく“ラグジュアリーゲストハウス”であることに徹底したパーソナルなホスピタリティもこちらの大きな特徴であり、魅力のひとつといえる。
「山荘 京大和」内にある「翠紅館」は、幕末に桂小五郎など勤皇派の志士たちが集まり、世にいう翠紅館会議を開いた歴史的な場所。窓の外には、樹齢300年を超える臥龍松など見事な樹々を愛でることができる。
外川ゆい:取材・文 Text by Yui Togawa
松川真介:写真 Photographs by Shinsuke Matsukawa
京の伝統美と共鳴する ぬくもりのゲストハウス
(右)江戸時代から継承されてきた茶室「送陽亭」越しに、シグネチャーレストラン「八坂」とバー「琥珀」、その先に八坂の塔が見渡せる。(左)何気なく廊下を歩いていても、八坂の塔が映画のワンシーンのように目に飛び込んでくる。時間と共に変わる趣も実に優美。
東山三十六峰を背に、二寧坂に面した情緒あるロケーションに誕生した「パーク ハイアット 京都」。創業140余年の料亭「山荘 京大和」のおよそ3000坪の敷地内に立地し、歴史的建造物7室や日本庭園と共存する。ニューヨークを拠点に活躍するデザイナーのトニー・チー氏と約400年の歴史を誇る宮大工からスタートした竹中工務店による共同設計の賜物で、4棟の低層建築が歴史景観区域の街に馴染む。客室には、芳しいタモ材を多用し、寛げる柔らかな空間を演出。天井から屋根の庇に続くことで、包み込まれるような感覚になる。マーブル調の御影石を基調にしたモダンな浴室には、バスタオルを入れた「公長齋小菅(こうちょうさいこすが)」による竹細工の籠を配するなど、建物同様に見事な融合がなされている。
(右)シグネチャーレストラン「八坂」で、目の前の鉄板で鮮やかに作られる「パンケーキ雲丹、天使の海老、キャビア」(コース1万8000円~)。(左)「琥珀」で供される「琥珀ジントニック」と「守破離カクテル」(各2000円)。
バー「琥珀」のシグネチャーカクテル「琥珀ジントニック」は、東山の井戸水を使用した京都蒸留所によるオリジナルのクラフトジン「青龍」を使った一杯。京番茶で濾すことで、ふんわりと香りを纏って注がれる。このようなさりげなく、漂うようにちりばめられた京都らしさが心地よい。客室に備えられた唐紙師「雲母唐長(きらからちょう)」によるオリジナルのレターセットや、スパで使用するオーガニックコスメブランド「KOTOSHINA」。アーティストや職人による作品も随所に置かれ、いずれも奥ゆかしい。また、ライブラリーや客室に置かれた本は、並び順はもちろんのこと、開かれた頁まで定められている。そのような徹底した美学が「パーク ハイアット 京都」を形成している。
(右)宿泊棟手前に位置するライブラリー。奥の壁には藍染作家、福本潮子が手掛ける大きな作品「繧繝(うんげん)」が飾られている。(左)「山荘 京大和」の欄間に、イタリア人アーティストのオブジェを融合させたアート作品。幻想的に光を放つ。
シグネチャーレストラン「八坂」とバー「琥珀」を結ぶ空間。総支配人のマーク・デ・リューヴァーク氏が、最も好きだと語る場所だ。八坂の塔を遮るものなく望め、陽が沈む空は日ごとに異なり飽きることがない。振り返ると、茶室「送陽亭」が凛と佇み、せせらぎと日本庭園が広がる。こちらの場所同様、館内を行き来する際、屋根はひと続きだが、一旦外気に触れる構造になっている。それは、建築家の「五感を研ぎ澄まして欲しい」という仕懸けなのかもしれない。二十四節気七十二候の暦にあるように、日々刻々と季節は移りゆく。日常に紛れてしまいがちなわずかな空気の違いも、こちらではハッとさせられる。よく知っているはずの京都の風景が、不思議なほどドラマチックに映る。
PARK HYATT KYOTO(パーク ハイアット 京都)
京都府京都市東山区高台寺桝屋町360
☎075-531-1234
チェックイン15:00/チェックアウト12:00
全70室
2名1室利用時の朝食付き料金11万円前後~(消費税別)
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May 23, 2020 at 01:00PM
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