１０日は時の記念日。「古時計師」を名乗る井上悦朗さん（７２）＝金沢市野町２丁目＝の工房では古いからくり時計の修理復元が進む。工房にずらりと並ぶ時計は、どれも井上さんの手によって再び命を吹き込まれた。動物の姿を模した愛らしい逸品や、優しげな音色を響かせる時計が、それぞれの時を刻んでいる。
３０分ごとにピエロが手足を動かし、愉快なダンスを披露する。１００年以上前に作られたドイツ製のからくり時計だ。
ほかに井上さんが修復に取り組んでいるのは、金属の球が転がって針を進める時計に、鳴き声と共にフクロウの目や口が動いて時を知らせる日本製のもの。３品とも自身で直しがいのある品を求めて取り寄せた。
「時計は奥深くて、底がない。挑戦の連続が面白い」と魅力を語る井上さんのもとには、全国から時計の修復依頼が舞い込んでいる。大切な家族の形見や、ともに育ってきた思い出の品など、持ち主の思い入れはさまざまだ。
父の代から続く時計店を継ぎ、古時計の修復を専門としてから約２０年。新型コロナウイルス禍に触れて「こんな時だからこそ、手作りの希少な時計で癒やしの時を感じ取ってほしい」と穏やかな笑顔を見せた。
北國新聞社
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June 10, 2020 at 04:04AM
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