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ネットが初のテレビ超え:広告費に見る時代の転換点 - Nippon.com

インターネットの伸長は著しいが、国内の広告費において転換点を画する大きな動きが2019年に起きた。インターネット広告が初めて2兆円を突破し、長らく首位に君臨していたテレビ広告費を抜いたのだ。この象徴的な出来事が起きた背景と今後の見通しを「2019年 日本の広告費」をまとめた株式会社電通の北原利行氏が解説する。

広告費は「景気を映す鏡」

広告は「時代を映す鏡」とかねてより言われてきた。広告費も同様に「景気を映す鏡」でもある。電通が1947年より発表している「日本の広告費」は日本の経済成長とともに拡大してきた。下の図にあるように、総広告費は名目国内総生産と相関が高く、対GDP比率も安定している。その意味で景気を映す鏡となるのである。さらに、さまざまなメディアの広告費は時代と共に変化しており、広告費は「メディア市場を映す鏡」でもある。

2019年は長らくトップの座を保っていたテレビ広告費がインターネット広告費に抜かれた年となった。日本の広告市場とその変化を読み解いていきたい。

2桁成長を続けるネット広告費

2020年3月11日に発表した「2019年 日本の広告費」のポイントは以下の通りである。

  • 拡張するデジタル領域やイベント領域を追加推定し、日本の総広告費は6兆9381億円となった
  • 8年連続のプラス成長
  • インターネット広告費が前年に続き、2桁成長でテレビメディア広告費を超え、初めて2兆円超え

広告市場は時代と共に変化する。その動向に合わせて19年から新たに2つの項目を新設・改定した。1つは新設項目として「日本の広告費」における「物販系ECプラットフォーム広告費」、そしてもう1つは改定項目として「日本の広告費」における「イベント」を追加推定した「イベント・展示・映像ほか」である。

この部分を追加したことにより、日本の広告費は6兆9381億円となり、前年比は106.2%となる。ただ、前述したように、18年には含まれていない新設・改定部分が含まれているため、単純に前年と比較するわけにはいかない。前年同様の項目による推定では、6兆6514億円、前年比101.9%となる。

急速なデジタルシフトの波

今回の発表で一番注目された点は、前述したようにインターネット広告費が初めて2兆円を超え、テレビメディア広告費を抜いたことである。その背景にはデジタルトランスフォーメーションがさらに進み、企業のマーケティング活動がデジタル領域にシフトしていること、そしてスマホをはじめとしたデバイスの普及で、消費者の情報摂取行動がインターネットを中心に行われるようになっていることに起因している。

さらにはデジタルを起点にした既存メディアとの統合ソリューションが進化していることも、インターネット広告費を押し上げている要因になっている。

DAN(Dentsu Aegis Network)が19年1月に発表している「世界の広告費予測」では18年の時点で既に構成比はデジタル広告費38.5%、テレビ広告費35.4%となっており、日本市場もいずれは同じ状況になることは予想されていたので、広告関係者は冷静に受け止めている。

ただ、これはインターネットが全てを飲み尽くすということではない。米国市場ではテレビ広告費もいまだに伸張しており、デジタル広告費がそれ以上の伸び率を示しているにすぎない。むしろインターネットが出てきたことで、それぞれのメディアの価値がより明確になってきていると考える方が妥当なのである。

マスコミ4媒体由来のデジタル広告費が伸長

それぞれの媒体別の広告費は以下の表の通りである。日本の広告費は大きく「マスコミ4媒体(新聞・雑誌・ラジオ・テレビ)広告費」、「インターネット広告費」、「プロモーションメディア広告費」からなる。かつてはマスコミ4媒体広告費が全体の半分以上を占める大きなカテゴリーであったが、今では4割を切り、インターネット広告費の伸張が著しい。

媒体別広告費(億円)

出所 : 電通 ()は内数

「マスコミ4媒体広告費」はどれも前年より減少しているが、その一方で「インターネット広告費」に含まれる「マスコミ4媒体由来のデジタル広告費」は伸張している。これはマスコミ4媒体企業が自社で展開するインターネット広告のことを指す。例えば、雑誌広告は前年比91%であるが、雑誌デジタルは120%と大きな伸張を見せている。

全国出版協会・出版科学研究所が発表した19年の出版市場規模によれば、紙と電子を合算した出版市場(推定販売金額)は、前年比0.2%増の1兆5432億円。14年の電子出版統計開始以来、初めて前年を上回り、出版市場全体における電子出版の占有率は、約2割を占める規模となり、電子化の進展とともに広告費もインターネットにシフトしていることが理解できる。

その他「プロモーションメディア広告費」の中で「イベント・展示・映像ほか」の伸び率が突出しているが、これは前出したように改訂した結果でもある。改訂の背景には近年のイベント領域への関心の高まりがあるからだが、インターネット時代、実際の体験やライブ感といったものが重視されるようになり、イベントが増加しているからである。

広告のこれからはどうなる?

この図はメディアごとの広告費の推移。インターネットの伸張が著しいことがわかる。2004年にラジオ、06年に雑誌、09年に新聞を抜き、そして19年にテレビ広告費を凌駕した。一見するとインターネットが他のマスメディアの広告費を奪っているようにも見えるが、それは単純な見方である。

インターネット広告費はスマホの普及、そして運用型広告(検索連動型広告など、膨大なデータを処理するプラットフォームにより、広告の最適化を自動的もしくは即時的に支援する広告手法のこと)の進展と共に、このグラフからもわかるような急速な伸びを見せている。一方、旧来のマスメディアはテレビ以外はインターネットが台頭する以前から減少傾向を見せており、新聞部数の減少、あるいは出版市場の減少はインターネットだけが原因で説明がつくわけではない。

下のグラフはビデオリサーチのデータをもとに、メディア接触率の変化を捉えたものであるが、広告費と似た動きを見せている。

広告主にとって広告というのはメディアに広告を出すことが目的ではなく、広告を出したことで広告主のメッセージが効率よく消費者に伝わり、その結果としてブランド認知率が上がったり、購買行動が起きることが目的である。そのためには、消費者がどのメディアを使っているかということが重要であり、メディアの接触率が高いことが広告効果に影響するのである。

既存メディアとネットの複合化が今後の焦点

インターネット広告費の伸張の要因として、人々がスマホを使って日常的に情報を摂取する状況は若い世代のみならず、中高齢者層にもどんどん広がってきており、それに伴って、インターネットの広告が増加していることがまず挙げられる。

さらには、インターネットではさまざまな情報摂取行動の履歴、購買履歴や個人のデモグラフィックなデータなどを組み合わせること、つまりデータドリブン・マーケティング(売上データや顧客データ、WEB解析データなど、多種多様なデータを活用して、経営の意思決定や企画立案を行っていくマーケティング手法)の技術が飛躍的に向上し、個人個人をターゲットにすることが可能となり、効率的に広告主のメッセージの伝達が可能になったことが大きな要因でもある。

いわゆるアドテクノロジーはどんどん進化しており、広告主が効率的に広告展開をできることが大きなメリットなのである。

ただ、その一方でインターネット上のさまざまな問題、フェイクニュースやアドフラウド(ネット広告配信における詐欺的な不正行為のこと)などの問題もある。さらには、インターネット広告が登場して四半世紀が経つわけだが、インターネットだけでは解決できない問題というのが現れていることも確かだ。マスメディアの信頼性、リーチ力というのは、まだまだインターネットでは実現しない部分も多い。既存のメディアとインターネットをどう効率よく組み合わせていくのか、ということがますます問われてくるのである。消費者がインターネットだけで全ての情報摂取行動を完結する時代が訪れない限りは。

今回のコロナ禍で「巣ごもり消費」という言葉が現れたように、人々の消費行動も変わり、またメディアへの摂取行動も変わってきている。「ニュー・ノーマル」時代に向けて、広告主の広告活動も変化することが予想され、それに伴い、インターネットをはじめとするメディアの使い方も変化が訪れることは容易に考えられる。

メディアの立場からすれば、広告メッセージを含めて読者、視聴者、消費者の情報摂取行動に組み入れられるか、ということがますます問われる時代になっているのである。

バナー写真:PIXTA

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