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お尻のタトゥーはまさかの失敗作? 鏡を見ると思い出す「ⅢⅤⅤⅢ」の教訓 - 読売新聞

 東京で子育てに奮闘する元ヤンママ・アッコさん(27)の体には、20歳の頃、ノリで入れたタトゥーが数多く刻まれています。ただ、あまり深く考えないで入れたタトゥーの中には後悔してもしきれない「失敗作」もあるそうで……。読売新聞オンラインの人気連載「元ヤン子育て日記@TOKYO」。今回は、お尻に刻まれたトホホな数字に思うこと。

 結婚前、夫と同棲(どうせい)を始めた直後、えらく面倒な思いをした。
 夫が私のタトゥーを指しながら、いちいちあれやこれやと意味を尋ねてきたのだ。

 私の場合、タトゥーは入れたかったから入れただけ。別に「一生背負う」的なことは全く考えていなかったし、その場のノリで決めていたから、答えも当然、テキトーになる。

 例えば、右腕のタトゥー「Love the life you live. Live the life you love」なんかは、「う~ん。ボブ・マーリーの名言らしいよ。意味は分かんないけど」。肩にある「★」マークは、「アメリカの兵隊のお守りじゃなかったかな。ホントかどうかは分からないけど」という具合だ。

 基本は「ふ~ん。そうなんだ」で済んでいた。ただ、お尻にある小さなタトゥーについてだけは、私は顔から火が出るような恥ずかしい思いをすることになる。

 「さん、ごー、ごー、さん……? これなに?」

 ある日、私のお尻の「ⅢⅤⅤⅢ」というタトゥーを指さして、彼はいつものように私に聞いてきた。パッと見で目立つ“大物”でもないから、存在自体も忘れかけていたタトゥーだ。

 ん? 何だったけな? 「分かんない」

 「えっ!? タトゥーの意味が分かんないってどういうこと?」
 「多分ラッキーナンバー……だったかな」
 「ラッキーナンバー……? 自分の……?」

 夫は珍しく食いついた様子で、追究してきた。

 「いや、みんなの」
 「『みんなのラッキーナンバー』ってなに!?」

 夫はスマホを取り出して必死に「みんなのラッキーナンバー」について調べたが、真相にはたどりつけなかった。

 20歳の頃の私の趣味は、タトゥーを入れること。

 このコラムでこれまでも紹介した通り、当時の私はすさんでいて、手のつけようがない状態だった。周りにはタトゥーを入れている知り合いがたくさんいたから、彫ることに抵抗感もなかったし、タトゥースタジオに出入りするようになるのも自然な流れだった。

 初めての施術にかかった時間は3時間。ウィーンという機械音と共にガリガリガリ……と何かを削る音がする。けっこー痛い。ただ、その痛みと引き換えに、自分の体の新しい一部が完成する。鏡で見ると、言葉では言い表せない感動があった。

 実際には、自分も、生活も、周りの環境も何一つ変わってない。だけど、当時の私は体に「意味のある何か」が刻まれることで、自分が「変わった」と感じた。

 初めてタトゥーを彫った日以降、私は美容院を予約するかのように、次回の予約をするようになった。

 ただ、まだかな、まだかなって、スタジオに行く日を心待ちにしていたわりには、デザインがなかなか思い浮かばない。

 うーん。
 困った私は、大体、予約前日の夜に、ケータイで偉人の名言なんかを検索し、テキトーに良さげなものをピックアップ。例のレゲエの神様の言葉もそうして探した。

 お尻のタトゥーもこんな調子で決めた。なんとなく「数字」を入れたかったけど、なかなか思い浮かばず、「数字 意味」とかで検索した。

 行き当たったのが、「ⅢⅤⅤⅢ」だ。なんでも、「このナンバーを身につけると幸運が訪れる」らしい。「おっ! ラッキーナンバー? 身につける……ってことは、タトゥーにいいじゃん!」。自分のリサーチ能力にほれぼれとした。

 こうして、例のデザインは決まり、スタジオでお願いした。彫り師も「オッケ~。ヤバイじゃん」とノリノリ。かくして、私のお尻に「ⅢⅤⅤⅢ」が30分程で刻まれた。

 さて、夫(当時は同棲相手)が謎の数字に関心を抱いて、しばらくしてからのこと。

 「あの数字のナゾ、分かったよ」。彼は興奮気味に私に話しかけてきた。
 告げられたのは衝撃的な事実だ。

 「あなたのタトゥー、たぶん間違ってますよ」

 彼(いわ)く、正しい数字は「358」らしい。
 私の名前とか生年月日とか、いろいろネットで調べて、幸運の数字っぽいものを探した結果、この数字に行きついたという。しかも、名前はラッキーナンバーではなく、正確には「エンジェルナンバー」と呼ばれているもので、スピリチュアル界隈(かいわい)ではそれなりに有名な数字、なのだそうだ。

 で、なんでこんな間違いが起きたのか。

 はい。その通り。「ⅢⅤⅧ」とすべきところを、「Ⅷ」を「Ⅴ Ⅲ」と入れてしまったのだ。
 当時の私は、ローマ数字なんて全然知らなかったし、ただ単にウェブで見つけた「ⅢⅤⅧ」をそのままスタジオで見せて、スタジオの人も「Ⅷ」と「Ⅴ Ⅲ」の区別がつかなかったというわけだ。

 まさかの、何から何まで間違えているという事実!

 「エンジェルあっこ、とお呼びしてもいい?」

 夫は、将来の妻のタトゥーを指さして、死ぬほど笑っていた。

 あれから7年が()ち、私の人生は大きく変わった。

 恋をして、結婚し、故郷を離れ、出産し、見知らぬ土地で子育てに没頭しているいまの私。あの頃の自分には想像もつかないことばかりだ。
 いま振り返ると、体の一部を変えなくたって、生活も環境も前向きになれる何かがあれば、自然に変わっていくものなんだな、と思う。

 「ⅢⅤⅤⅢ」は結局のところ何の意味もない数字だったけど、最近は自分の分身のように思えてきた。何の目標も見いだせず、ただ「変わりたい」と、もがいていた過去の自分。お尻のタトゥーを鏡で見る度に、「よくここまで変わったね」とちょっとだけ自分を褒めてあげたい気持ちにもなれる。

 そして、そのおかげで私は、まだまだ「変わりたい」と思えている。

 もっと優しいお母さんに、もっと夫を支えられる妻に、もっと自立した女性になりたい。

 お尻に刻まれた「ⅢⅤⅤⅢ」。もしかしたら、本当に我が家の「みんなのラッキーナンバー」になりつつあるのかもしれない。
 少なくとも、娘には、一生モノの決断で失敗しないためにも、ちゃんと教養は身につけときなさい、と身をもって教えられるわけだし……。

筆者(アッコさん)プロフィル
 1993年生まれの27歳。中部地方出身。中学時代は「学校がつまらない」と授業をサボり、成績はオール1。その後、私立の専修学校に進学するも不真面目な素行に加え、成績もふるわず、ヤンキーへの道一直線。卒業後、一度は医療事務の仕事に就いたが、遊びたい気持ちを抑えられず退職。職を転々としていたところ、会社勤めをする夫と出会う。都内で夫と2歳の長女と3人暮らし。

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December 10, 2020 at 08:20AM
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