東 啓介連載「tone0714」vol.8
前回、ご自身の荷造り法や、旅の流儀を語ってくれた東さん。話をしているうちに、また「海外を旅したい」という思いに火がついたようで……。
放送中のドラマ『チェイサーゲーム』で演じている“クールな”魚川貴央とは異なる“人なつっこさ”で語ってくれました!
「tone0714」の意味:東さんの愛称「とん」と、“音色”や“濃淡”を意味する「tone」を掛け、そこに誕生日7月14日の数字を組み合わせたタイトル。
東 啓介が旅で何かを得るなら
温泉やキャンプなど、さまざまな旅を思い出すなかで、ニューヨークを旅した時の記憶がよみがえってきたようで……。一体、どんな旅だったのでしょうか。
毎日「ギャー!」と叫んでいた。ニューヨークの旅
――前回(連載第7回)、「あー旅したいなー!」と叫んでいましたが(笑)、どこか行きたい場所はあるんですか?
東:海外旅行に行きたくて……。以前、ニューヨークに行った時(2019年)は、綿密なスケジュールを立てないと回りきれないぐらい予定を詰め込んでしまって、本当に大変だったんです。1週間でミュージカルと舞台を4~5作品を観るスケジュールになっちゃったから。
当時、僕がニューヨークを題材とした舞台(『Color of Life』)への出演が決まっていて、その役作りのために“観なきゃいけないミュージカル”と“観たいミュージカル”を選んだら、そんなことになってしまった。まじめな話、全然時間が足りなくて、毎日「ぎゃー!」と叫んじゃうくらい、バタバタしてました(笑)。
それにニューヨークは大都会なので、どうしても移動に時間がかかるんですよね。たとえば、ブルックリンブリッジで観光してから、観劇のためにタイムズスクエアに戻るとしたら、距離的にはそこまで離れてないのに、渋滞で車が全然動かない。それで観るつもりだった舞台が1本観られなくなって、すっごくもったいなかった。本場の舞台を見逃すだなんて!(思い出して本気で悔しがり中) なので、知らない街や海外の国を旅する時は、ゆったりした日程にしようと思いました。理想は2週間くらいかな。
――確かに、土地勘のない街での移動は時間が読めないですね。
東:予定が詰め詰めだったからこその“濃密な旅”は充実していたし、それはそれで楽しかったんですが、移動疲れがハンパなかったです。だからこそ、リベンジしたいなと。あの時は1週間だけだったから。
――結局、ミュージカルは何本観たんですか?
東:『ディア・エヴァン・ハンセン』、『オペラ座の怪人』、『ライオン・キング』、『スリープ・ノー・モア』の4本です。
『ディア・エヴァン・ハンセン』と『スリープ・ノー・モア』は、当時話題になっていた作品です。特に『スリープ・ノー・モア』は、貸し切ったホテル全体が舞台。僕ら観客も仮面をつけてホテル内を移動するというスタイルだったので、目新しさもあり、めちゃめちゃ楽しかったです!
それプラス、日本の劇団四季でも上映されている作品を選びました。『ライオン・キング』は、子どもたちにすごい人気でしたよ。どこよりもデカい劇場でやっていて、場の雰囲気に圧倒されるというか。そういう、現地ならではの力強さを肌で感じたくて、「古きよきもの」と「新しいもの」を感じられる作品を2つずつ選びました。
――ミュージカルや舞台は、1つの作品を観終わるまでに数時間はかかりますもんね。
東:実は舞台以外にも、回らなきゃいけないところがあったんです(笑)。(『Color of Life』の)ストーリーに出てくる場所や観光名所。メトロポリタン美術館とかですね。あと、ニューヨークの街並みを見ながら歩いたり、地下鉄も利用したかったので……、あれこれしてたら時間が……。
ひとり、極寒のセントラルパークで
東:実は両親も同じタイミングで行ったんですけど、僕が仕事をしている間、「ちょっと(以前住んだことがある)ニュージャージーに行ってくるわ!」と(笑)、ふたりで思い出めぐりをしていたみたいです。基本的には夜、両親と合流して一緒にごはんを食べてました。
でも一回だけ、お互いの都合がつかなくて別行動で食べた夜ごはんがすごく印象的でした……。あの古くてでっかくて、駅の中に鳥が飛んでいる駅、なんでしたっけ?
――グランドセントラルステーションですか?
東:そこです! 駅構内にある「グランド・セントラル・オイスター・バー」でカキとクラムチャウダーを食べたんですけど、めっちゃおいしくて、あったかくて……。あ~、ニューヨークに行きたくなってきちゃったな。早めにリベンジしないと!
――カキとクラムチャウダーのために?
東:それもそうですけど(笑)、時間が足りなくて諦めたことを回収しに行きたいです。渋滞で観られなくなっちゃった舞台や、親と一緒に行けなかったニュージャージーめぐりとか。今度は行き先とか決めず、ゆるく散歩したいですね。
そしてできれば、暖かい時期に行きたい。前回は2月に渡米したので、ホントに寒くって。だって、気温マイナス20度の中、セントラルパーク(ニューヨークの中心にある市民憩いの公園)に行ったら、僕しかいないんです。寒すぎて誰もいないんですよ(笑)! あれは寂しかったな……。
なので、今度は6月くらいに行って、にぎやかなセントラルパークを体験してみたいです。
僕の日常ではない「日常」を感じに行く
鮮やかな喜怒哀楽をにじませながら、ニューヨークの思い出を話す東さん。彼は旅をどうとらえているのでしょうか。
東:ニューヨークで言えばビルや人の感じ、街の雰囲気。箱根だったら自然。東京にずっといたら感じられないもの。そういう、僕の日常ではない「日常」を感じられるところかなあ。あと、海外であれば、その国が持つ文化に触れられるところに魅力を感じます。
――非日常や多様性を学ぶ旅、ですね。
東:実は今、ヨーロッパにも関心があります。イギリスや、ドイツ、ポーランド……。ポーランドにはアウシュビッツ強制収容所跡があるので。自分で何度も調べたんですけど、なぜあのような悲劇が起きたのか、実際にどんなことが起きたのか、それを自分の目で見て知って、ちゃんと感じたい。実際に行って、どんな場所であるか知ったうえで、自分なりに感じてみたいんです。
――興味を持ったキッカケは何だったんですか?
東:もちろん収容所の存在は知ってたんですけど、学校で習う程度でした。でも最近、それを題材にしたドキュメンタリーを観て関心を持ちました。
ニューヨークで、セントパトリック大聖堂に行った時には、ただ建物を見るだけではもったいないなと思って、ミサに参加し、神父さんのお話を聞いたんです。神父さんの語りにじっと耳を傾けている人、30分ずっと祈り続けている人などさまざまで、とても興味深かったです。信仰……というより、教会の存在や歴史が、人々の日常にどうつながっているのかを少しでも知ることができてよかった、と僕なりに感じました。その経験もつながっているのかもしれません。
――キリスト教とその歴史を知ると、より理解が深まる舞台もありますよね。
東:はい、舞台と切っても切れないものなので。そういう意味ではイギリスには行きたいと思ってます。できれば語学留学したいなと。
――演劇で、ではなく? 英語、普通に話せますよね?
東:マジで今は無理ですよ。単語を知っていても、普段しゃべってないから口からまったく出てきませんもん。海外を旅したいっすね。英語とか、日本語以外の言葉を使わないといけない状況に追い込まれたい……。
旅は「考える」を増幅させてくれる
東:「感じること」かな。それが身になっても、なんなくても、いいんですけど。
知らない場所に行くには、そこに行き着くための手段や方法から、すべて調べなきゃいけないですよね。でも、その手間をかけたからこそ、その土地を訪れた時の感動や興味が大きくなる。「ここには、こんなに自然があるんだ!」と感じたら、その自然と地続きの建造物にも関心が高まったりして、「なぜここに橋ができたのか」と知りたくなったり。
つまり、その土地に、来て・見て・調べたことが、自分の「考える」を増幅させてくれるんですよね。
特に地方に行けば、方言もあるし、その地域の文化の発展も知ることができる。日本国内だけでも違いはたくさんあるわけで、海外ならもっともっと多いはず。
旅は面白いです。「考える」という扉を開け続けることができるから。ふふ、こういう話、めっちゃ好きなんですよ(笑)。
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プロフィール
現在、テレビ東京ドラマ『チェイサーゲーム』に孤高の天才クリエイター・魚川貴央役で、TBSドラマ『闇金ウシジマくん外伝 闇金サイハラさん』に肉蝮役で、出演中。
■テレビ東京ドラマ『チェイサーゲーム』 https://www.tv-tokyo.co.jp/chasergame/
■TBSドラマ『闇金ウシジマくん外伝 闇金サイハラさん』公式ホームページ https://www.mbs.jp/saihara/
10月6日~29日には、日生劇場で上演されるミュージカル『ジャージー・ボーイズ』に(ボブ・ゴーディオ役、Wキャスト)出演。
■日生劇場ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』公式ホームページ https://www.tohostage.com/jersey/
東 啓介:公式サイト&公式SNS
取材・文/中川 薫 撮影/北浦敦子 ヘア&メイク/加勢 翼 スタイリスト/青木紀一郎
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