
家庭菜園での出来事に着想を得て、厳しい現実世界に力を合わせて立ち向かうアオムシの旅物語を描いた絵本「あおむしアーちゃんムーちゃんのぼうけん」(文芸社)を5月に出版した。絵本に本格的に挑戦し始めたのは十数年前で、「まさか80歳を超えて絵本を出すことになるとは」とほほえむ。
結婚後、京田辺市で子育てをした。一帯は田園風景が広がり、子どもたちが遊びに飽きることはなかった。絵本もたくさん読み聞かせた。子どもたちは「瞳をキラキラ輝かせて聞き入っていた」。自身も絵本の世界に引き込まれ、「いつか自分で創作できたら」との思いを抱くようになった。
家庭菜園も作った。無農薬でキャベツやキュウリ、ホウレンソウなどを育て、子どもたちは虫捕りに夢中になっていた。その姿を見ながら、自然と絵本の構成を思い浮かべていた。
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夢の実現に向けて取り組み始めたのは子育てや介護が一段落した70歳頃。大手出版社の通信講座で絵や物語の展開を学び始めた。幼い時、宝塚歌劇の舞台装置デザイナーをしていた父から教わった油彩や木版画の腕も生かすことができた。
絵本のコンテストに出品するようになった2018年、東京の出版社から「絵本を出しませんか」と声をかけられた。
突然の誘いに戸惑い、当初は断っていたが、チョウの幼虫に食べられ、レース模様のようになったキャベツの葉が思い浮かんだ。
家庭菜園で栽培し、穴だらけになったキャベツを見て、「せっかくここまで育てたのに」と肩を落としたことがある。やがて、首をふりふりおいしそうにかじっている幼虫が成長していく様子に「虫たちも一生懸命生きている」といとおしく感じるようになった。
美しいアゲハチョウに憧れる2匹のモンシロチョウの幼虫が、強風にあおられてキャベツの葉ごと大空へ飛ばされ、いろんな畑や街をめぐる――。そんな冒険が思い浮かび、挑戦することに決めた。
「アオムシが活躍する5月に出しましょう」。出版社の担当者が背中を押してくれた。
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中学生の時、アメリカの絵本が教材に使われたことがあった。かわいい絵が多用され、英語の授業がとても楽しかったのが忘れられない。「心が躍ったあのときの気持ちに素直に戻りたい」。そんな思いで制作に向き合った。
自然の豊かな色彩を表現しようと水彩で作画し、縁をペンで際立たせた。完成した24ページの絵本は周囲から、「とにかく絵がきれい」と評価を受けた。
幼稚園児に読み聞かせをしたという小学4年生、ヨーロッパにいる孫に贈るという読者。出版後に寄せられる声に胸を熱くしている。「虫嫌いな子どもたちが読んで、虫も同じ生きている仲間のように感じ、自然を身近に感じてもらえたら」(今村正彦)
◆きたむら・まさこ 1939年、神戸市生まれ。61年に結婚し、63年に夫の実家の京田辺市へ。木版画や油彩画の制作にも取り組む。京田辺芸術家協会会員。
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