【味・旅・遊】「あの朗読をもう一度聞きたい」筑波山、イベントケーブルカー８分の旅茨城 - 産経ニュース

限定のヘッドマークを付けたイベント列車のケーブルカー＝茨城県つくば市（篠崎理撮影）

色づき始めた紅葉を車窓から眺めながら民話や神話の世界に浸っては－。茨城県つくば市の筑波山でケーブルカーによるイベント列車「ストーリーテラー’Ｓ　レールウェイ」が１１月１０日まで運行される。期間中は土日祝日限定で車内での約８分間、若手の男性声優が地元に伝わる民話などを朗読する。登山というとちょっと尻込みしてしまうが、ケーブルカーならと出かけてみた。

筑波山は標高８７７メートルと日本百名山では最も低い。とはいえ、登るとなると日ごろから運動不足の身にとってケーブルカーはありがたい。ケーブルカーは中腹の宮脇駅と、２つの峰のうち男体山の山頂付近の山頂駅を結ぶ。高低差は約５００メートル、全長約１６００メートルと国内のケーブルカーで３番目に長い。宮脇駅は、筑波山神社の横にあり文字通り「お宮の脇」。ひんやりした空気で周囲は神秘的でまるで時間が止まったようだ。

イベント列車は赤色の「もみじ号」で行われ、限定のヘッドマーク付き。朗読は、午前１１時から午後２時台までの上下線計１２本を予定。混雑時には臨時列車の設定も計画する。

定刻通り列車は出発した。ガタン、ゴトンと揺れる中、朗読はすぐに始まる。情感たっぷりの話ぶりに揺れる車内はすぐに劇場へと。茨城の民話「しっぺいたろう」だ。このほか、地元に伝わる民話をアレンジしたオリジナル作品が朗読される。

民話は車窓の色づき始めた紅葉となじむ。筑波山は古来より「西の富士、東の筑波」と称され、古くは万葉集にも詠まれた。そんなことを考えていたら、民話を途中から聞き逃してしまった。話は上下線で重なることはないという。

約８分で山頂駅に。徒歩約１５分で男体山山頂へ行ける。もう１つの峰は女体山。それぞれの峰が男女の神を祭っており、縁結びや夫婦和合に霊験あらたかという。空気が澄む晩秋や冬は、富士山や東京のビル群、東京スカイツリーが見渡せるというが、この日はあいにく見えなかった。

筑波山の奇石群も楽しめる。名前の通りガマガエルのように見える「筑波山ガマ石」や、今にも転がり落ちそうな状態で大きな岩が岩間に挟まり、弁慶でさえも７回後戻りしたという「弁慶七戻り」などは圧巻だ。女体山山頂からはロープウエーを使う別ルートもあるが、今回はケーブルカーで民話を楽しみたい。

語り部といえば年配女性のイメージだが、なぜ若い男性なのか。「女性だけのグループも多く、家族でも女性は旅行に絶大な影響力がある。だから若い男性なんです。大きな声では言えませんが…」。関係者は口をそろえる。

いわゆるイケメンボイスの１人、菊田千瑛(ちあき)さん（１９）は「列車での朗読は初めて。より心に訴えかけるせりふ回しで、筑波山への興味を深めたい」と話す。ケーブルカーを運行する筑波山観光鉄道の三輪武士社長は「イベント列車が筑波山に来るきっかけとなってほしい」と期待する。

車内を見渡せば、茨城県の花「バラ」や筑波山名物の「ガマの油」などの絵柄で装飾。伝説を題材とした４種類のオリジナル限定切符を販売、購入者の中から１日１人程度、同県石岡市の「いばらきフラワーパーク」の入場券が当たる。

もう一度、朗読を聞いてみたい。そんなことを考えていると、わずか約８分の旅は終わってしまった。（篠崎理）

【アクセス】　■筑波山ケーブルカー　つくばエクスプレス（ＴＸ）つくば駅から、直行筑波山シャトルバスで筑波山神社入り口まで約４０分、徒歩約１５分。常磐自動車道土浦北インターチェンジから車で約４０分。ＴＸ利用者には電車やバス、ケーブルカー、ロープウエーがすべて利用できて、割引になっている「筑波山きっぷ」がおすすめ。イベントケーブルカーの問い合わせ（０２９・８６６・０６１１）

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