「木」の建設がつくる新たな景観
2025年の大阪・関西万国博覧会の施設計画が先ごろ発表され、詳細が明らかになってきました。注目されるのは「大屋根(リング)」と呼ばれる会場を一周する大規模な施設であり、完成時には周長は約2キロ、幅30メートル、高さ20メートルの、日本の伝統的な木組みを現した世界最大規模の木造建築物となります。この「大屋根」は万博のシンボルとして、また日本の「木」に対する高い技術力と美意識を世界に知らしめる建築として多くの訪問者、とりわけ諸外国の人々の記憶に強く刻まれることになると思います。
日本は国土のおよそ3分の2が森林であり、日本人は古くからこの森林に親しみさまざまな工芸品や民芸品を生み出し、大規模な建築を建設してきました。京都、奈良に代表される寺社仏閣、数寄屋建築や町屋が作り出す街の景観など、「木」の建築や街並みが持つ温かさや優しさを体験し親しむことは、日本を旅する核心的な魅力といえます。脱炭素社会の実現、SDGsの実践が求められる今日、日本では再び「木」の建築が注目を集め、各地に木材を使用した庁舎や図書館、ホテルといった個性的な建築が建設され、その土地土地の魅力を大いに高めています。東京や大阪などの大都市にも高層のオフィスやホテルが、また先の東京オリンピックでは新国立競技場など木材を多く使用した建築が建設され、鉄とコンクリートの建築と異なるこれまでにない新しい景観を創り出して人々の目を楽しませています。
当協会は国産の木材を建築に積極的に利用することが脱炭素社会の要求に合致し、森林の育成と木材利用がつくる循環型経済が都市と地方を結び付け、双方が持つ観光資源の魅力を向上させるという考えのもと、「きづかいのこころ」と称した活動を10年ほど前から続けています。これは人と物・社会・自然に対して「気遣いながら木を使う」という活動で、林産業関係者とのワークショップやシンポジウムなどを開催し、また多くの当協会員が自らの企業活動を通してこの活動を実践しています。
明治以降、日本の建築の近代化は鉄とコンクリートによってなされ、各都市各地方の景観を創ってきました。このことは大いに評価すべきですが、成熟社会を迎えた日本にはそれにふさわしい建築や都市の新たな表情が求められています。温かさと優しさを備えた「木」はその重要な要素となり、木材利用の循環型経済が都市と地方を結び付け、「木」の創り出す新しい景観が、日本を旅する魅力を大いに高めてくれると確信しています。
大内氏
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