トレイシー・テスティンさん。
Courtesy of Tracy Testin
- 多くの高級ホスピタリティ企業は、"女性のひとり旅"市場に対応し始めている。
- 女性たちは1人利用の割増料金の免除を受けたり、女性向けのアメニティや旅行プランを利用できることが増えつつある。
- 新婚旅行のカップルをターゲットにしたリゾート施設でも、1人客に楽しんでもらえるようなプランを提供している。
トレイシー・テスティンさん(59)は年に3回、カリフォルニア州マリブの高級不動産業者としての多忙な生活から離れて、海外旅行へ出かけている。
このうち2回はハイキングやアウトドアを楽しむ旅 —— イギリスを歩いて横断するなど —— に、残りの1回はホリデーシーズンの一番お得な時期を狙って贅沢な旅行に出かけるのだと、テスティンさんはInsiderに語った。
「アメリカのサンクスギビング(11月の第4木曜日。感謝祭とも呼ばれる)から12月15日くらいまでは旅行の需要がほとんどない時期なので、贅沢な旅行をするには一番良い時なんです」とテスティンさんは話している。テスティンさんはこの時期の旅行に8000ドル(約106万円)ほど使っているという。
2022年はアガサ・クリスティの『ナイルに死す』に敬意を表すべく、エジプトを訪れた。
テスティンさんは部屋をシェアするために友人を誘うこともあるが、大抵は1人で旅行に出かける —— 35年以上前からそうしているという。
「一緒に旅行に行かないか、誰かに聞くのがイヤなんです。『どこに行く? 何をする? 』という一連のやりとりが」とテスティンさんは語った。
「自分が行くか行かないか… 誰かを待ちたくないんです」
テスティンさんが1人で旅行を始めた頃は"ひとり旅"自体が少なく、1人で来たというと旅先の人が驚くこともしばしばだったという。ただ、最近はテスティンさんのように"ひとり旅"を求める人が多いと、複数の高級旅行会社はInsiderに語っている。
予約1件あたりの平均支払額が3万6000ドルだというイギリスの高級ツアー運営会社Scott Dunnのグローバル・セールス・ダイレクター、サイモン・リンチ(Simon Lynch)氏はInsiderの取材に、ひとり旅に関する問い合わせがここ3年で急増していると話した。そして、ひとり旅の予約の60%は女性だという。北欧諸国の高級旅行を手掛けるUp Norwayの担当者も、ひとり旅をする女性の予約が2019年から40~50%増えたとInsiderに話している。オーダーメードのツアーを運営するMorocco by Designの創業者ケリ・レビット(Keri Levitt)氏も、今では予約の4分の1が女性のひとり旅だと話している。
会員数19万人のソーシャル・ネットワークとツアーを運営するSolo Female Travelers Clubでは毎年、女性5000人を対象に彼女たちの行動や意見を調査している。2021年の調査では、回答者の65%が女性のみの団体旅行に関心があると答えていて、前の年に比べて30%ほど増加した。これを売り上げを伸ばすチャンスと見て、多くの企業が"女性のひとり旅"市場に対応し始めている。
Solo Female Travelers Clubのアイスランドの旅。
Courtesy of the Solo Female Travelers Club
2人利用の部屋を1人で使う場合にプラスされる割増料金を免除し始めた企業もある —— クルーズ旅行を専門にしているAvalon Waterwaysや美術館や博物館のツアーを手掛けるSmithsonian Journeys、ウェルネスリゾートのBody Holidayやプライベートジェットを運営するTCSといった高級ブランドもこうしたトレンドを取り入れている。
ひとり旅の女性客に合わせたアメニティや旅行プランを提供し、成功している企業もある。ツアー会社のTrafalgarは2022年の初めに女性のみを対象としたツアーを立ち上げていて、同社の担当者はツアーに申し込んだ女性の61%は"ひとり旅"だったと話している。2022年の夏には、サン・バルテルミー島(セント・バーツ島とも呼ばれる)にあるHôtel Barrière Le Carl Gustafが7000ドルで「アローンムーン・パッケージ(Alonemoon Package)」 —— 豪華なバンガローに宿泊し、プライベートヨガやメディテーション、スパ・トリートメントも楽しめるレストランの割引券が付いたプラン —— を提供し始めた。
カリブ海のサン・バルテルミー島にあるHôtel Barrière Le Carl Gustaf。
Courtesy of the Hôtel Barrière Le Carl Gustaf
同様に、新婚旅行先として人気のモルディブのギリ・ランカンフシもカップルが楽しむあらゆる体験 —— サンセットセーリングや星空の下で眠るなど —— を1人でも楽しめる"ひとり旅"プランを1泊1800ドル~提供している。ギリ・ランカンフシの担当者は、ここ1年半で6人の女性がこのプランを予約したとInsiderに語った。
モルディブのギリ・ランカンフシ。
Courtesy of Gili Lankanfushi
自身もよくひとり旅をする —— 直近ではメキシコのバハ・カリフォルニア州で贅沢なホエール・ウォッチングを楽しんだ —— という旅行アドバイザーのミシェル・マスター・オア(Michelle Master Orr)氏は、女性のひとり旅が増えた大きな要因の1つは、コロナ禍で海外旅行に関する規制がしばしば変化していることだと話している。
「ひとり旅をする人たちは他人とスケジュールを合わせるのに疲れ切ってしまうことがなく、柔軟なんです」とオア氏は語った。
パンデミックの精神的な影響もある。
「コロナ禍で離婚やパートナーとの別れを経験した女性にたくさん会いました」とここ数年、デジタルノマドとして過ごしているライターのサラ・ウィルソンさん(48)は話している。
「あれから1年くらい経って、さまざまな問題を解決した彼女たちは再び自分の人生をスタートさせています」
「ロックダウン(都市封鎖)で女性たちは子育てに追われました。女性の体験の多くは他人の世話に縛り付けられています」
「女性のひとり旅は人生を肯定する素晴らしい体験であり、他者から大切にしてもらえる体験です。自身の信念を改めて確認することができます」
女性のひとり旅の需要が高まる中、企業の提供するプランや人員の見直しを支援するために、Solo Female Travelers Clubの共同創業者メグ・ジェラード(Meg Jerrard)氏は最近、企業向けのコンサルティング部門を立ち上げた。
Solo Female Travelers Clubの共同創業者メグ・ジェラード氏。
Courtesy of Solo Female Travelers Club
雑誌『Hospitality ON』が実施した調査では、世界の旅行会社トップ350のうち、女性が経営している企業は12.4%しかないことが分かっている。
「旅行業界は男性中心の業界です。もちろん女性もいますが、客室清掃といった職種についていることが多いのです」とジェラード氏は話している。
こうした状況を変えようとジェラード氏が取り組む一方で、テスティンさんのような旅行客はただ待っているつもりはない。
「『旦那さんはどこ? どうしてあなたは1人なの?』などとよく聞かれます。わたしは親愛を込めて、こう答えるんです。『(旅行に)全く行けないよりも、1人で行く方がいいのよ』と」
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