常人離れした技で観衆を魅了する「ハッピードリームサーカス」の名古屋公演が今月下旬まで開かれている。全国を移動する旅芸人である団員の大半が中南米出身だ。記者は入社前、大学を1年間休学して、中南米を放浪したことがある。親しみを感じる国々から来た団員や家族の舞台裏の生活をのぞかせてもらった。(高橋信)
熱田区のショッピングセンター「イオンモール熱田」。駐車場の一角に仮設された高さ18メートルの大型テントで、空中ブランコやファイヤーダンスなどの大技が展開される。心躍らせる観衆の多くは目に留めないだろうが、その裏に点在する40基以上のコンテナハウスが団員たちの「家」だ。
コロンビア、メキシコ、アルゼンチンなど各国から集まり、共同生活を送る。スペイン語が飛び交い、洗濯物がはためく。日本各地を移動する公演にあわせ、3カ月ごとに引っ越す。
ハッピードリームサーカスは中南米のサーカスでは珍しく家族の同行を認めている。ピエロのルーズベルト・バレンシア・サンタンデルさん(33)は7歳の時、地元コロンビアで、初めてピエロを演じたベテラン。10年ほど前に海外に飛び出し、中国、台湾を経て7年前、家族で同サーカスにやってきた。
名古屋公演中の9月下旬、ルーズベルトさんに家族が増えた。妻で空中ブランコ芸人のカテリーネ・アンドレア・デルガド・アレクレさん(31)との間に長女が誕生。日本語由来でキセキちゃんと名付けた。公演後も、舞台監督として、妻らと照明などのチェックにあたる多忙なルーズベルトさん。ベビーカーに乗ったキセキちゃんは、その間、テントで過ごす。団員仲間が入れ代わり立ち代わり訪れ、「おしゃぶりしてる」「かわいい」などと声をかけて面倒を見る。
ルーズベルトさんと同名の長男「ジュニア」君(11)も1歳からピエロを務める。名古屋では高さ5・3メートルの一輪車に挑戦。初練習では、「落ち着いて」と仲間の声援を受け、なんとか舞台を一周した。涙をこらえられないジュニア君を、ルーズベルトさんらが熱く抱き締め、テントは温かい雰囲気に包まれた。
小学6年のジュニア君は20回以上、転校を繰り返し、名古屋では旗屋小学校に通ってきた。サーカス内ではスペイン語、学校では日本語を話すバイリンガルだ。各地で友人はできるものの、放課後は練習があり、級友と遊ぶことはほぼない。オフは、団員の子どもらとサッカーをしたりテレビゲームをしたり。「大きな家族みたいな感じです」。
苦労も多い旅芸人の生活だが、ルーズベルトさんは「サーカスの人生はこういうもの。最初は大変だったけど慣れた。サーカスが大好きなので」と笑う。「ハッピードリームサーカスを世界一のサーカスにして、日本で自分のサーカスを作りたい」。大きな夢に向かって旅を続けるルーズベルトさんたちは、27日で名古屋公演を終え、次の「住まい」の沖縄へ向かう。
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