Search

訪日客 伊勢路巡礼の旅 自然、歴史、文化、生活 「ストーリー」でPR目指す - 読売新聞オンライン

 さあ、物語をつむぐ旅へ――。伊勢と熊野三山を結ぶ熊野古道伊勢路にインバウンド(訪日外国人客)を呼び込もうと、外国人を招いた12日間の実証ツアーが伊勢市を起点に始まった。訪日客の地域周遊と長期滞在を促す観光庁の「ロングストーリー造成事業」の一環。外国人目線で旅行商品としての価値を評価してもらい、世界遺産登録20周年となる来年度の販売を目指す。(新良雅司)

 「伊勢参りを終えた巡礼者が最初に越える峠が、ここ多気町の 女鬼めき 峠です」

 7日朝、江戸時代さながらの巡礼装束を身につけたツアー参加者たちを前に、「多気語り部の会」会長の奥村清司さん(67)がそう説明した。ツアーは「祈りを体験する『熊野古道伊勢路』巡礼の旅」と名付けられた。

 女鬼峠の距離は約2キロ。昼間でもほの暗い場所が多く、かつて荷車が通った跡とみられる わだち や、旅の安全を祈る観音像が歴史を感じさせる。

 参加者は奥村さんの話に興味深く耳を傾け、峠の至る所で写真を撮影した。立命館アジア太平洋大学で観光を学ぶチリ人のフェルナンド・パディーダさん(34)は「伊勢路は自然の美しさに加え、歴史と文化、住民の生活が一体となった魅力がある。エコツーリズムを好むインバウンドを呼び込めそうだ」と語った。

 ツアーは、東紀州地域振興公社などで構成する「熊野古道伊勢路プロジェクト」が5~16日の日程で実施。米国や英国、カナダ人ら約10人が参加している。江戸時代の巡礼者にならい、伊勢から和歌山県那智勝浦町の熊野那智大社、西国三十三所第一番札所・那智山青岸渡寺までの約200キロを地域住民とふれあいながら徒歩中心で旅する。

 初日は、参宮街道沿いで江戸時代から続く麻吉旅館に宿泊。伊勢木綿を表紙に使った御朱印帳を手作りした後、おかげ参りが流行した江戸時代に全国へ広がった伊勢音頭を体験した。

 初めて日本を訪れた米国人のロビン・ディボーさん(34)は「伊勢音頭による歓迎を受けたことで、この地に入りやすい雰囲気をつくってもらえた」と喜んだ。

 2日目は、二見興玉神社と伊勢神宮を参拝した。伊勢路を歩くだけでなく、茶道など日本の文化を体感できるコンテンツも用意している。 庚申かのえさる の日に住民が集まって夜を過ごす「 庚申講こうしんこう 」や妖怪、鯨供養といった地域に伝わる民間信仰にもふれる。

 熊野古道は2004年に世界遺産登録された。だが、女鬼峠をはじめ伊勢路の北部では、世界遺産に登録されなかったルートが多く、馬越峠(尾鷲市、紀北町)などに比べると知名度が低いことが課題だった。地元や県などは未登録区間の追加登録を目指している。

 伊勢路の来訪者(推計値)は、登録から10周年の14年は約43万人に上った。コロナ禍で落ち込み、22年は29万人、そのうちインバウンドは1割弱とみられる。県などは、来年の20周年に向け、外国人が興味を示しそうな「ストーリー」を提供しようとアイデアを練っている。

 東紀州地域振興公社の杉崎誠事務局長は「江戸時代の巡礼者が目指した伊勢神宮と熊野三山という二つの聖地を結ぶ『祈りの道』こそが伊勢路であることを、もっと海外にアピールする必要がある」と強調する。魅力的な観光商品を開発し、海外の需要を取り込んで地域経済を活性化しようと意気込んでいる。

ロングストーリー造成事業  地域の観光コンテンツを散発的に体験してもらうのではなく、旅全体をストーリーとして提供する観光庁の事業。「祈り」をテーマに自然崇拝や精神文化などを体感してもらう熊野古道伊勢路や、四国のお遍路、福井の鯖(さば)街道ツアーなど10件がモデル地域に選ばれている。

Adblock test (Why?)



from "旅" - Google ニュース https://ift.tt/XFvPEcw
via IFTTT

Bagikan Berita Ini

Related Posts :

0 Response to "訪日客 伊勢路巡礼の旅 自然、歴史、文化、生活 「ストーリー」でPR目指す - 読売新聞オンライン"

Post a Comment

Powered by Blogger.