東京・港区のJR浜松町駅(北口改札)から竹橋客船ターミナルまで徒歩7分。東京港と伊豆七島を結んでいるのが、東海汽船の大型客船および高速ジェット船です。大型客船は22時に出航し、東京湾に面したビル群や工場地帯の夜景を船上から眺めることができます。そして船でひと眠りして目が覚めたら、大自然いっぱいの伊豆七島に到着!
今回は、そんな非日常感あふれる「東海汽船のフェリー旅」を紹介しましょう。
大屋雄一
モーターサイクル&自転車ジャーナリスト。短大卒業後、好きが高じて二輪雑誌の編集プロダクションに就職し、6年の経験を積んだのちフリーランスへ。ニューモデルの試乗記事だけでもこれまでに1500本以上執筆し、現在進行形で増加中だ。また、中学〜工高時代はロードバイクにものめりこんでいたことから、10年前から自転車雑誌にも寄稿している。キャンプツーリングも古くからの趣味の一つであり、アウトドア系ギアにも明るい。
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時間に余裕がある人の特権、それがフェリー旅
旅行で利用する公共交通機関の中で、鉄道や路線バス、飛行機と比較して選ばれにくいのが旅客船ではないでしょうか。
例えば東京近郊から北海道へ移動するとします。飛行機なら羽田から新千歳空港まで約1時間半、新幹線なら東京駅から新函館北斗駅まで4時間40分ほどです。
これに対してフェリーの場合は、まず最寄りのターミナルである茨城県の大洗港まで移動する必要があり(東京駅から約2時間)、そこから乗船して17時間45分で苫小牧港に到着します。つまり、時間に余裕がある人の特権が船旅と言えるでしょう。
長距離フェリーの中には、大海原を眺めながら入浴できる大浴場や、メニュー豊富なレストラン、地域限定品をそろえたショップなどがあり、なかなかにアミューズメント感があふれています。
さらに天候が良ければ展望デッキから美しい日の出や日没、満点の星空も眺められるので、映え要素も申し分なし。これがフェリー旅の魅力なのです。
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伊豆大島なら日帰りでも滞在時間は8時間半
そんなフェリー旅をもう少し手軽に楽しめるのが、東京都港区の竹橋客船ターミナルから出航している東海汽船です。行き先は伊豆諸島の各島で、最も近い伊豆大島まで最短で1時間45分で到着する高速ジェット船も運航していますが、やはり狙うは大型客船でしょう。
現在の大型客船さるびあ丸は3代目にあたり、2020年に就航したばかり。外観も船内もピカピカです。基本的に竹橋客船ターミナルを22時に出航し、伊豆大島には翌日6時に到着。その後、利島、新島、式根島を経由して神津島で折り返します。
さるびあ丸が伊豆大島に戻ってくるのは14時すぎで、14時半に出航。竹芝には19時に到着しますので船内で1泊することにはなるものの、ほぼ日帰り感覚で楽しめるのが最大のおすすめポイントです。
今回は、年間を通じて最も観光客数の多い伊豆大島行きを例に、魅惑のフェリー旅を紹介します。朝6時に到着して14時半に出航するまで滞在時間は8時間半。もちろん宿泊しても良いのですが、まずはぜひ日帰りプランをお試しください!
竹橋客船ターミナルを22時に出航して、最初に訪れるビッグイベントが「レインボーブリッジくぐり」です。普段、レインボーブリッジを車やゆりかもめに乗って渡ることはあっても、下を通過することはまずないでしょう。ライトアップされているので映え要素満点です!
さるびあ丸の客室は、個室の特等から2等椅子席まで6つのグレードに分かれており、それぞれで運賃が異なります。時期にもよりますが、2024年1月の東京〜大島間を例に挙げると、特等は大人1名片道で1万5190円(税込、以下同)、2等は和室・椅子席とも5430円となっています。
2等和室と1等室はいわゆる雑魚寝で、1等室には布団セットとスリッパが用意されています。2等和室の寝具は枕しかありませんが、キャンプ用のマットや寝袋を持ち込んで快適空間を作り出す強者も。もし用意がなくても、船内には貸し毛布(1枚100円)があるのでご安心ください。
なお、さるびあ丸に大浴場はありませんが、コイン式のシャワールームが設けられています。また、展望レストランや自動販売機、船内無料Wi-Fiサービスなどがありますので、時間を持て余すことはないでしょう。
竹橋客船ターミナルを出航しておよそ8時間。朝6時に伊豆大島に着岸します。大島には2つの港があり、海上の状況によって島の北側にある岡田港(おかたこう)と西側にある元町港を使い分けています。
往路入港地と復路出港地が異なる場合があり、当日の朝8時ごろに出帆港が決まります。島内放送によるアナウンスのほか、東海汽船の公式サイトや大島観光協会のX(旧Twitter)などにも掲載されるので、必ず確認してください。
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伊豆諸島最大の島である伊豆大島 火山島ならではの特徴的な景観が!
伊豆大島での移動手段は、バスやタクシー、レンタカー、レンタサイクルなどがあります。サイクリストの聖地としても売り出し中で、自転車を持ち込む人も少なくありません。
筆者はこれまでに伊豆大島へ6回渡っており、全て自転車を持ち込んでいます。輪行袋に収納した状態であれば、手荷物料金は無料。しかも、現行の3代目さるびあ丸には専用のスペースが設けられているので安心です。
なお輪行袋に入れるのが面倒という方は、片道1500円の運賃が発生しますが、自転車そのものを受託手荷物として預けることも可能です。
伊豆大島の中央部には、現在も火山活動を続けている標高758mの三原山がそびえています。島をぐるりと一周するルートは約45kmで、そのあちこちに立ち寄りスポットが点在しています。レンタカーなら寄り道なしで1時間ほどで一周できるでしょう。
なお、飲食店やスーパーは、町役場のある元町に集中しており、それに次ぐのが岡田エリアと波浮港周辺です。コンビニはありませんのでご注意ください。
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別れの季節には紙テープも 旅情を誘う演出もフェリーならでは
伊豆大島の観光を満喫したあとは、再びさるびあ丸に乗船します。出港時、時期によっては紙テープによる別れのあいさつが見られるので、これもフェリー旅ならではの魅力でしょう。
さて、夜景と大自然を一度に楽しめる東海汽船のフェリー旅、いかがだったでしょうか。先ほど運賃について簡単に例を挙げましたが、実は頻繁にお得な切符が発売されているのです。
今は3月31日まで東京〜大島・利島・新島・式根島・神津島の往復切符が大人1名6000円(2等和室限定、最大4日間有効)で販売されており、ほぼ半額かそれ以下で各島に渡れることになります。
さるびあ丸は3代目になってからエンジン音が静かになり、揺れも減ったように感じます。また天候にもよりますが、少なくとも東京湾内ではゆっくり航行するので、大きく揺れることはほぼありません。よって、船酔いが心配な方にもおすすめしやすいのが東海汽船フェリー旅なのです。
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