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<花に舞い踊る>菊の露 恋の愁いに見る美 - 東京新聞

「菊の露」楳茂都梅咲弥(2017年11月、国立劇場舞踊公演「舞の会」より)=国立劇場提供

「菊の露」楳茂都梅咲弥(2017年11月、国立劇場舞踊公演「舞の会」より)=国立劇場提供

 日本舞踊には風景描写が多々組み込まれ、とりどりの花がさまざまな形で作品を彩っています。秋の花を扱った作と言えば圧倒的に菊の花が多く、長寿や繁栄を祝う常磐津「菊の栄(さかえ)」「菊の盃(さかずき)」、長唄「菊慈童(じどう)」、菊の可憐(かれん)さを映す長唄「菊づくし」など、美しくめでたい曲がほとんどですが、中には今回紹介する地唄「菊の露」のような、もの哀(がな)しい風趣を伝える作品もあります。

 菊の露とは、菊の上に降りた露のことをいい、これを飲むと長寿を保つとされ、菊と同様に元来はめでたいものとして多く扱われています。しかしこの作品では、露を置いた菊の風情と儚(はかな)さをその身に重ね、切ない女心が綴(つづ)られます。

 恋しい人の訪れがすっかり途絶えてしまった今。夜明けを告げる鳥の声や鐘の音が哀しく身に染みる秋の朝には、二人で過ごした夜がふと思い出され、涙が頬(ほお)をつたう。あの人を忘れることなどできるはずもない。昼間は庭の小菊を眺めて寂しさを慰めてみるものの、夜になれば菊に置かれた露のような哀(あわ)れなわが身を一人嘆く−といった内容です。

 艶物(つやもの)と呼ばれる男女の情愛を題材とした作品群の一つで、恋の愁いに沈む女性の姿に美を見た日本の感性が薫る一曲。男が既にこの世にいないとする解釈もあり、哀切感の深い曲調のために、追善の曲としても用いられます。

 地唄は主に上方を中心に伝承されたもので、十一月二十一日、東京・国立劇場での「舞の会 京阪の座敷舞」では、こうした地唄の情緒纏綿(てんめん)たる作品をはじめ、能に取材した格調高いものなど、さまざまな舞の魅力が披露されます。 (舞踊評論家・阿部さとみ)

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