2022.09.26 00:00
50年のカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現に向け、航空分野全体の脱炭素化を推進するため、改正航空法が12月1日に施行される。政府、航空会社、空港管理者が相互に連携し、強力な歩みを進める。脱炭素化は国際競争力を確保する観点からも喫緊の課題となっている。
航空分野の脱炭素化をめぐり、気候変動の観点から航空機の利用を避ける「飛び恥」運動が欧州を中心に巻き起こったことは記憶に新しい。隣国と地続きの欧州では近距離移動を鉄道に代替する動きが見られ、米国ではトウモロコシなど穀物を使った生産能力の高さを生かした代替航空燃料の開発が進む。これに対して日本は島国のため航空に依存し、代替燃料自給率も低い。脱炭素への目標達成に、より積極的で計画的な取り組みが求められている。
日本国内における二酸化炭素(CO2)総排出量のうち運輸部門は18.5%を占め、そのうち国内航空は5.0%。また、移動手段として、航空は800km以上1000km未満の距離で約5割弱、1000km以上の距離では約9割が利用しており、特に長距離の場合は航空機に代わる移動手段の確保は事実上困難となっている。
これらの背景も踏まえ、航空分野全体における脱炭素化を計画的に推進するため、国は航空法・空港法等の一部を改正し、12月1日に施行する(一部は9月1日)。目標、政府の施策、航空会社と空港管理者の基本的な取り組みなどについて定めた「航空脱炭素化推進基本方針」を策定。これに基づき、航空会社と空港管理者はそれぞれの立場で脱炭素化推進計画を作成し、国土交通大臣の認定を得ることで、計画実現に向けての特例措置などの支援が受けられるようになる流れだ。
国が今後定める基本方針では数値目標が掲げられる。政府の地球温暖化対策計画やICAO(国際民間航空機関)の削減目標とも調和させ、国際航空は19年の年間排出量を基準に「20年以降の総排出量を増加させない」、国内航空は「30年度までに単位輸送量当たりのCO2排出量を13年度比で16%削減」、各空港では「13年度比で30年度までに温室効果ガス排出量46%以上削減」とする方向で検討している。
なお、ICAOは現在、国際航空のCO2削減に向けた短中期目標として、燃料効率を年平均2%改善することと、20年以降の総排出量を増加させないことを掲げている。さらに国際的な長期目標について、今秋に開催されるICAO総会で採択される予定となっている。
国の基本方針を踏まえて航空会社が作成する脱炭素化推進計画では、持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進などが柱となる。空港においては、空港ならではの広い敷地や建物の屋根部分なども活用し、太陽光発電パネルを設置するといった再エネ拠点化ともいえる脱炭素化推進計画が策定されることになる。同時に空港管理者は、航空会社、給油事業者、ターミナルビル事業者のほか、太陽光発電事業者等から成る空港脱炭素化推進協議会を組織。航空輸送の両輪である航空会社と空港が連携し、航空分野全体で脱炭素化を推進するための体制を構築することも重要なポイントだ。
急がれるSAFの導入
航空機運航の分野でCO2削減策の中核として大きな期待が寄せられているSAFは、バイオマスや廃食油、排ガスなどから製造される。その原料の生産・収集から製造、燃焼までのライフサイクルでCO2排出量を従来の燃料より約80%削減できる。世界の航空業界では、50年に航空輸送におけるCO2排出量実質ゼロの実現に向けて、航空燃料に占めるSAFの割合を30年までに10%に増加させることをマイルストーンにしており、全日空、日本航空もこの実現を目指す。航空機メーカーは水素・電動航空機など次世代の航空機の研究・開発にも取り組んでいるが、それが完成しても、長距離・大型機は引き続き液体燃料によるエンジンでの飛行が見込まれることから、SAFは必要不可欠な存在となっている。
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