ロシアのウクライナ侵攻から1年が過ぎた。この間、現地の戦況などが常に報じられ、学生たちにも戦争について考える機会が増えた。観光によるまちづくりを学ぶ椙山女学園大(名古屋市千種区)のゼミは2022年度、沖縄の戦跡を活用した観光に着目。5日間にわたり現地調査し、モデルコースなどを提案した。あえて重いテーマを選んだ学生たちが得たものは。(日下部弘太)
ロシアの侵攻もきっかけ 教育旅行をテーマに
現代マネジメント学部の水野英雄准教授(観光経済学)のゼミで、主に3年生が活動した。沖縄本島の中部にある読谷村(よみたんそん)が募集した、村に滞在して仕事や観光をする「ワーケーション」事業に応募。戦争を知り、豊かな自然も楽しむ教育旅行を提案した。
「平和 当たり前じゃない」 読谷村など訪問
戦争をテーマにしたきっかけの一つは、ウクライナ侵攻だった。「今ある平和が当たり前じゃないと感じた」と高木彩名さん(3年)。
事業には選ばれなかったが、ならば自分たちで行こうとクラウドファンディング(CF)にも乗り出し、9月中旬に沖縄を訪れた。
読谷村では米軍が沖縄戦で最初に上陸した地や、住民が避難した洞窟のチビチリガマとシムクガマを見学。チビチリガマでは米兵の仕打ちを恐れて集団自決が起きた一方、シムクガマではハワイからの帰国者が「米国人は一般住民を殺さない」と逃げ込んだ1000人ほどを説いて投降し、全員が助かった史実に触れた。村職員らと意見交換もした。
ひめゆり平和祈念資料館(糸満市)などの戦争関連施設や、首里城公園(那覇市)といった観光施設にも足を運んだ。
ワークシートやモデルコース作成
その上で、戦跡を生かした読谷村の観光振興について考えをまとめた。二つのガマのいずれかに展示施設を造り、入場料を取ることや、明暗が分かれたガマのエピソードの映画やドラマ化などを提案。中高生や大学生の教育旅行を増やそうと、クイズなどを通じて沖縄戦や村の特色を理解するワークシートと3泊のモデルコースをつくった。
暗さだけでなく 楽しさも大事と実感
参加した学生は口々に、ガマの暑さなど現地でこそ得られる体験の大切さを語った。橋詰さくらさん(3年)は「ガマは風通しが悪く、水も通っていない。中にいても心安まることがなく、戦争の重みをリアルに感じた」。旅行としては、1日の中で暗い場所と楽しい場所を交ぜて、気持ちが落ち込みすぎないようにする工夫も必要だと実感した。
CFをしたことで別の学びもあった。交流サイト(SNS)で「遊びに行くためでは」と批判されてショックを受け、一時は行くか迷った。ガマのエピソードも相まって、高木さんは「情報を正しく知り、発信することが大事だとあらためて理解した」と振り返った。
村職員は好意的な受け止め
戦跡など暗い記憶が残る場所の観光活用は、現地で歓迎されないこともある。今回のゼミ活動を沖縄の人はどのように受け止めたのか。
読谷村商工観光課の山内真心(まなか)さん(31)は「平和学習ではガマを活用してきたが観光の視点はあまりなく、参考になった」と学生の提案を評価。「遺族の気持ちも尊重しつつ、今ある米軍基地も含めて明暗の両面を伝えられる観光を考えていきたい」と話した。
ガマに展示施設を置く案には「別の施設で集約して展示しているので」と否定的だったが、QRコード付きの説明板の設置など、別の方策はあり得ると答えた。
「一緒に何かできれば」と沖縄の教育旅行会社
平和学習や教育旅行を手がける那覇市の企業「さびら」の野添侑麻さん(30)も「外からの目線で気付いたことは私たちにとっても大事」と学生の取り組みに好意的だった。
さびらは昨年設立したばかりで、メンバーは20~30代が主体。住民になったつもりで沖縄戦をたどり、今の社会について考えるきっかけにもなるような体験講座を提供している。野添さんはガマなど戦跡の老朽化、ガイドの不足といった課題も挙げ「同世代で一緒に学び合い、何かできればいい」と県外の若者の関心に期待していた。
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