【編集者のおすすめ】『西行歌と旅と人生』旅する歌人とともに風土味わう - 産経ニュース

『西行　歌と旅と人生』寺澤行忠著（新潮選書・１７６０円）

平安末期から鎌倉初期の歌人・西行のように、いつか全国津々浦々を旅して、日本の美しい風土をじっくり味わいたい―。そんな夢路の道連れに最適の一冊です。

著者は慶応大名誉教授で、西行歌集研究の第一人者。誤った形で現代に伝えられてきた西行の歌の数々を本来の姿に復元し、岩波文庫『西行全歌集』校注者らからもその仕事が特筆された碩学（せきがく）です。

傘寿を迎えた著者が「初心に立ち返り、西行を愛好する一般の方々に読んでいただけるもの」を期して書いた本書は、厳選された１８４首の名歌とともに、西行の出家の背景、秀歌の創作秘話、漂泊の旅の意味、桜への熱愛、無常を乗り越える「道」の思想、藤原定家との意外な絆、芭蕉（ばしょう）への影響等々、偉才の知られざる素顔をわかりやすく紹介しています。

著者は今でも西行の旅路をたどって日本全国を巡り歩くのが無上の喜びとのこと。皆さまもぜひ本書を片手に、西行の歌枕を訪ねてみていただければと思います。

（新潮社　新潮選書編集部　三辺直太）

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