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ある世界的デザイナーのクルマ、時計、そしてスニーカー──究極の"三種の神器"を公開 - GQ JAPAN

1 パテック フィリップのアクアノート

ゴールドのケース×ブラックのラバーベルトに一目惚れ。細い腕に合う38mm径というのもポイント。

時計といえばロレックスを外せませんし、エクスプローラー1は文字どおりマスターピースだと思う。しかし、もっている人が多いイメージがある。人とちがう1本が欲しくて選んだのがパテック。ゴールドっていうのが珍しいし、ぼくの手首に収まりのいい38mm径。生産数が少ないからなかなか出回りませんでした。3年前にみつかったのがこのアクアノートです。

それまではシルバー一択でした。そもそもゴールドは自分には似合わないと思っていたんです。ところがブラックのラバーベルトをつけただけで、Tシャツにもいけるカジュアルさが生まれる。

時計も何本かもっています。車同様プロダクトとしての魅力がある。じっくりと時間をかけて、1本、2本と釣り上げてきました。

2 アディダスのスーパースター

気に入ったスニーカーは複数揃えるのがお約束。うち1足はお呼ばれ用に新品の状態でキープしておくとか。

アディダスはこれまでずっとスタンスミス派でした。シェル・トウ(貝殻のように放射線状に広がるつま先の凹凸の意匠)が好例だけど、スーパースターってどこか野暮ったいイメージがあった。記憶が定かではないんですが、それがあるとき、いいかもと思え、あらためて履いてみれば思いのほかスマートで。ショーツからスラックス、ワンタックのワイドパンツまで収まりがよかった。

スニーカーはおんなじモデルを複数持ちするのが習慣になっています。スーパースターも4足をローテーションで履いています。1足はつねに新品の状態でキープ。ほら、大人になれば少しかしこまったシーンもあります。革靴を履くほどではないときのためにとってあります。

これら3点を見返すと、時代に合わせて変わっていく部分がありながら、スタイルを守り続けているところが共通しているように感じます。それは、ぼくのデザインワークにも通じるところかもしれません。(談)

3 ナローポルシェ(911E、69年製)

レストア中の1969年製ポルシェ 911 E タルガ スポルトマチック。

いまちょうどレストアしてもらっているところです。外装は黒。1969年の、ポルシェのカラー・コードでは700番といわれる黒です。内装も当時に忠実に合皮を選びました。色はまだ迷っているんですが、バーガンディかタンにするつもりです。

ナローポルシェは911の初期モデルですね。車幅が狭いから、そのように呼ばれるようになったそうです。

じつはいまから15年ほど前、探しに探して諦めた経緯があります。程度と金額のバランスに納得ができなかったからです。でも、友人が手に入れたのを知って気持ちが再燃したわけですが、いまの年齢(55歳)からいって、あらたに車を買うならこれが最後だろうなという思いもあった。長いこと待って、値は下がるどころか上がってしまいましたが、もう躊躇はしませんでした。

げんざいは1969年製ポルシェ 911 E タルガ スポルトマチックに加え、最後の空冷ポルシェといわれた1996年の993型911、そして最新モデルである992型911を所有しています。気づいたら、ほぼ25年ごとに3台揃っていました。

ポルシェはむかしから好きでした。事の始まりは20代で買ったポルシェ356のレプリカ、インターメカニカですね。

かたくなに守ってきたリアエンジン、そしてリアエンジンを守るがゆえのカエルのようなユニークなシルエット─、ポルシェならではの美学に惹かれました。ナローポルシェはその原点ともいうべきモデル。ようやく自分のものになって感慨もひとしおでした。

ぼくは道具として存在するプロダクトの、プラスアルファの部分に惹かれます。ポルシェにはこのプラスアルファがあって、それがぼくには心地いい。

塗装が終わり、いよいよ組み立てに入る。オーナーでなくても、この作業過程はワクワクするだろう。

はたして、こちらのオーナーはいったい……「kolor」の阿部潤一さんでした

カラーを立ち上げたばかりのころの阿部は天然素材にこだわっていたが、いまは違う。化繊を混ぜることでかつてないタッチが生まれる─と、素材開発のあらたな一面を知った阿部は、積極的に化学繊維を取り込んだ。そしてカシミアの服もポリ混の服も同列に並べた。この柔軟なアプローチは、リラックス感があって、ユーモアを感じさせると評されるカラーの世界観に深みを与えた。

心境の変化の理由を尋ねると、こんな返事が返ってきた。

「変わらない部分も大切ですが、前へ進むには変化していかなければいけないと考えています。それが、たとえこれまで敬遠していたものだとしても。あらたなチャレンジをすることで、また違った一面がみえてくるのではないでしょうか」

ずっと嫌いだったパクチーがある一品をきっかけに好きになったんですと阿部はチャーミングに付け加えた。

実験的なアプローチは、毎シーズンのようにかたちになっている。

「ここ数シーズンはスポーティな要素を取り込んできました。これまでに扱ったことのない要素です。そして、この秋はクラシックに戻しました。戻しましたが、すでにあるアイテムやディテールを1着のなかで共存させようと考えました。ジャケットニット、あるいはチェスターフィールドとトレンチコート、ショールカラーとノッチドラペル、といった具合に。突飛なものは突飛なもので終わってしまう。誰もが知っているものを組み合わせることで、引っかかりが生まれるのでは。たとえばクラブに着物で現れたら『お』って思うように」

パクチーの一件に通じるようなデザインワークのその先に見据えているのはなにか。

阿部さんはマスターピースをつくろうとしているんですね? と、答えを誘導してみると、言下に否定した。

「マスターピースや10年後の評価といったものはあまり考えていません。ぼくは日々精一杯、服と向き合っているだけです。なぜならば、マスターピースはつくろうと思ってつくれるものではないと考えているからです。シャネルツイードジャケットだってそう。ガブリエル・シャネルはただただ次の扉を開けようともがいたんです。そうして世に問うたジャケットには時代の波に流されることのない強さがあり、そうして語り継がれる存在になった」

ナローポルシェもパテック フィリップのアクアノートもアディダスのスーパースターも、マスターピース狙いで生まれたものではないだろう、と言う。「もがき」の果てに生まれたにちがいない、と。先達のマスターピースに囲まれて、阿部は心地よさを覚えつつ、背筋がピンと伸びる緊張感も味わっているに違いない。

PROFILE

阿部潤一  「kolor」デザイナー

1965年生まれ。文化服装学院卒。2004年にカラーをスタート。08SS、パリ進出。09年、東京・南青山にフラッグシップストアをオープン。12-13AWよりパリ・メンズファッションウィークにてランウェイデビュー。12年、カラー ビーコンをローンチ。同年、第30回毎日ファッション大賞を受賞。

Photos ウツミ Utsumi

Words 竹川 圭 Kei Takegawa

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October 20, 2020 at 06:00AM
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