年齢や障害の有無にかかわらず、誰もが気軽に旅行を楽しめる「ユニバーサルツーリズム(UT)」に関連し、遠隔操作の分身ロボットを活用した社会実験が金沢市内で行われた。コロナ禍で外出がかなわない難病の女性が遠方からロボットを通じ、現地でガイド役を務める学生と映像や音声を共有。カフェや名所を疑似的に巡り、新たな観光体験の可能性を探った。 (河野晴気)
社会実験 ガイド肩に遠隔操作カメラ
「こんにちは。オープン二周年、おめでとうございます」。今月上旬、同市暁町の古民家改装カフェ「おしゃべりcafeめてみみ」に、忍者姿のロボットを肩に乗せた学生が訪れた。声の主は富山県リハビリテーション病院・こども支援センターで入院生活を送る松原葉子さん。病室からパソコンでロボットを操り、店主の西崎史人さん、真奈美さん夫妻にマイクで呼び掛けた。
カフェ満喫 松原さん「主体的な感覚あった」
松原さんは、全身の筋肉が衰える筋ジストロフィーを患うオルガン奏者。長年、金沢など各地で演奏活動をしてきたが、感染症対策で全く外出できない状況が続いている。今回は、UTについて理解を深める富山福祉短大国際観光学科の授業の一環で、鷹西恒教授から参加の打診を受けた。西崎さん夫妻とは同じ自立支援団体のメンバーで、二〇二〇年七月に開業したカフェに「ずっと行ってみたかった」と目的地に選んだ。
忍者姿のロボットは、東京都のベンチャー企業「オリィ研究所」などが開発する「NIN_NIN(ニンニン)」を借りた。頭部のカメラは上下左右に動き、操縦者が実際に現地にいるような感覚を味わえる。身体機能の共有をコンセプトに試作を重ねており、観光用途の社会実験としては全国で三例目という。
カフェでは同社の据え置き型ロボット「OriHime(オリヒメ)」も使い、松原さんが店内を見回したりガイド役の学生四人と会話を弾ませたりした。その後は金沢城公園を散策し、他の観光客の注目を集める場面も。ニンニンを肩に乗せて案内した同短大二年の榊未優(みう)さん(19)は「特に重さも感じず、時々通信が途切れる以外に大きなトラブルはなかった。自分の見ている風景が松原さんに伝わるよう意思疎通を意識した」と話した。
実験を終え、松原さんは「主体性を持って一緒に旅をしている感覚があった」と振り返った。普段は人工呼吸器をつけ、外出には医療的ケアを担えるヘルパーの協力が必要な中、「テクノロジーの力で広がる世界があると実感した。長期入院を余儀なくされている他の方にも利用の選択肢が広がれば」と願った。
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