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群馬から長野、山梨へ。“駅そば”はしご旅 - 読売新聞オンライン

 鉄道旅の楽しみの一つといえば、“駅そば”だ。とくに冬場は湯気の立つできたてをかっこむと腹の底からじんわり温まり、列車の待ち時間にさえ感謝したくなる。近年、駅そばは減少傾向にあるが、頑張っている店も多い。そこで、群馬、長野、山梨を股に掛けた壮大!?な駅そばはしご旅に出てみた。

 スタートは信越線の横川駅。駅弁・峠の釜めしで有名な荻野屋が1番線ホームに出店している。この日の (ちゅう)(ぼう) 担当はベテランの前島久子さん。注文すると湯釜の「てぼ」(取っ手付きザル)に生そばを入れ、きっちり2分10秒 () でてから冷水で引き締め、湯釜で温め直して丼に盛った。「茹で置きしないで1杯ずつ生そばを茹でる。このひと手間がおいしさの秘密」と前島さんは笑う。食べて納得。そばのコシも舌触りもよく何杯でも食べられそうだ。

 かつての難所・ 碓氷(うすい) 峠を路線バスで越えて軽井沢駅に到着。しなの鉄道に乗り、小諸駅に向かった。2021年10月に駅そばが復活したと聞いたからだ。小諸駅そば 清野商店の店主・清野隆さんは元小諸駅長という経歴の持ち主。

 「2013年にホームの駅そば店が閉店してから、駅のにぎわいが薄れた気がしましたね。定年後、しなの鉄道と地域に少しでも貢献したくて開店を決意しました」

 清野さんの話を聞きながらそばを食べていると、地元のおじさんが来店。月見そばに卵のトッピングを注文した。「“両目”ですか」と話しかけると「豪華でしょ」と笑って食べ始めた。駅のにぎわいは戻りつつある。初日はここまで。 ()(ぐら) 駅まで進み、戸倉上山田温泉で宿をとった。

 翌日は朝から駅そば! 戸倉駅の信州そば かかしで自家製もつそばを食べる。かけそばに ()() 味のもつ煮を載せたものだが、もつ煮が絶品。まったく臭みがなく、いろいろな部位の食感も楽しめた。

 「もつ煮は新鮮な豚の内臓を一頭丸ごと仕入れ、丁寧に下処理してから天然素材のだし汁で煮込みます」と店主の丸山美智子さんは胸を張る。カウンターに並ぶ総菜もすべて手作りで、焼きたてのレバー串焼きをもらうとうまいのなんの。品書きに生ビールを見つけた時はクラクラしてきた。ここで1日が終わりそう。断腸の思いで長野駅へ向かった。

 長野駅から松本駅へは人気の「リゾートビューふるさと」を利用。日本三大車窓に数えられる (おば)(すて) 駅付近の絶景や北アルプスが大きな窓から望めた。松本駅の駅そば (くれ)()(がわ) 松本駅店では、なんと!本格的な八割そばが味わえた。

 「駅そばの使命である速さと安全面から冷凍麺を使っています。八割そばは冷凍すると切れやすくなるので開発に苦労しました」と社長の吉澤文武さんは教えてくれた。

 食後、篠ノ井線と中央線で小淵沢駅を目指す。途中、下諏訪駅から日帰り温泉・ (たん)() の湯に寄り道したが、“熱めの湯”は相変わらず熱く、腰までつかるのが精いっぱいだった。

 最後は小淵沢駅の (まる)(まさ) そば 小淵沢店。一番人気は (さん)(ぞく) そばで、巨大な鶏もも肉の唐揚げがドンと載る。ニンニク (しょう)() の下味がきいていて、そのまま食べてもうまいが、伝統の甘辛い汁につけるとまたうまくなる。

 「12月1日から“海賊そば”を始めます。食材はまだ内緒ですが、衣の中身はほっこりと軟らかくおいしいですよ」と社長の名取政義さん。くぅ~。食べたいぞ。駅そばはしご旅の第2弾、早くも決定である。

 文・写真/内田 晃

 (「旅行読売」2023年1月号から)

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