某月某日、ぐっすりと眠ったので、ハンドルを掴む手が軽やかであった。
モンペリエを経由し、スペインのバレンシアを目指していた。
ルートはA71を通りクレルモン・フェランを通過していく第一ルートと、ポワティエ、ボルドーを通るA10を通る第二ルートがあった。
山を突っ切るか、海沿いを行くか、迷ったが、あまり時間差はなかったので、高速A10、海沿いを通るコースへとハンドルを切った、父ちゃん。
どこまでもまっすぐと続くオートルート10だったが、ポワティエを通過した直後、車が、異常を報告したのであった。ビーっと警告音が鳴り響いた。
文字盤に、タイヤの空気圧をチェックしてください、と表示されたのであーる。
「今か、まだ、旅の途中じゃないか」
でも、ほっておいて、大事故になったら、大変である。仕方なく、サービスエリアに立ち寄ることになった。しかし、タイヤの空気圧をどうやったら正常に出来るのか、わかります? 普通、わからないのである。
「すいません。タイヤの空気が抜けているみたいなんですが、あの、どうやったらいいですかね」
ガソリンを補給しながら、父ちゃんは、隣でガソリンを入れている知らないおじさんに訊いてみたのであった。
「ほら、あっちに空気を入れる機械があるでしょ? 見えます? あれでやるんですよ」
げ、そんなこと出来るわけなかろうが・・・。
「いや、やったことないから、困ったな」
「大丈夫、なんでもやってみないと前には進まないんだよ。みんな最初は素人でしょ。でも、一度やれば次からは経験者になる。経験者になるチャンスですよ。空気圧は2,2くらいまで入れたら、十分ですから、諦めずにやってみてください」
お、おじさん、あんた神様か! 不意に、すごい言葉が戻って来て、頬っぺたを殴らたように目が覚めた父ちゃんであった。よっしゃあ、やったるでェ。
「ムッシュ、ありがとうございます」
「いいえ、マダム、よい旅を!」
ゲ、ゲゲゲ、また、マダムと間違えられた。あはは。ま、ここはそういうことにしておくか。☜しておくんかい!!!
自転車のタイヤの空気をいれるみたいに、車のタイヤに空気入れのゴム蓋があり、それを緩めてそこにチューブをさし、空気圧が2,2になるまで待った。(空気が入っているのかいないのか、ちょっとわかりずらい)
結構、大変な作業だった。4つのタイヤ全部に空気を入れるのに、なんだかんだ、20分くらいかかってしまった。
その後、三四郎にピッピとポッポもさせないとならなかった。サービスエリアを出るまでに1時間くらいのロスタイムが生じてしまった。
それでも、4時間くらい走ったら、ぼくらはフランスの京都、ボルドーに到着したのである。
「サンシー、今日は、いっそ、ボルドーに泊ろうか」
ということになった。
あはは、こんな旅でいいんでしょうか? 気まま過ぎるでしょ?
いきなり、ホテルには行ってはいけない。
素泊まりのようなことはさすがに出来ないし、怪しまれるので、ネットを使って、まず、クレジット番号を伝え、きちんと予約を入れること。
犬がOKで、本日一泊宿泊可能なホテルを、ネットで探した。中心地にいくつか良さそうなホテルがあった。インターコンチネンタルホテルも空室があったが、めっちゃ高かった。そこからランクを次第に落としていき、犬も大丈夫なホテルで、中心地の旧市街にあって、しかも一泊、2万円程度の4つ星ホテル、(条件が厳しい)があったので、即決した。
携帯でパスポートの写真を撮影し、先に送っておくと、自動チェックインも可能なのである。
ふふふ、父ちゃん、旅なれてる~。
チェックインが完了をしたら、ホテルの近くで、パーキングスペースを探し、車を停めた。荷物はパソコンと着替えと三四郎の餌が入った小型のトランク一つなので、身軽~、ボルドーの旧市街を歩きながら、優雅にチェックインをした父ちゃん&サンシーであった。
「ようこそ、辻様」
ホテルマンは優しいマダムだった。
「本日、お部屋をアップグレードさせて頂きました」
「え? マジっすか、なんで?」
「日本のお客様を大事にさせて頂きます。ゆっくりとお寛ぎください」
素晴らしいホテルであった。
運転と、タイヤの空気圧を入れるので疲れ切っていた父ちゃんであったが、せっかくボルドーにやってきたので、さっそく、三四郎と散歩に出かけることになる。
おおお、古都は美しいのであった。
※ ガロンヌ川沿いの遊歩道、家族連れでにぎわっている。
※ バスティーユか、と思った、素敵な塔・・・。
ボルドーは、大河(といっても常に泥の色をした)ガロンヌ川に面している、港の町で、市街地は蛇行する大河に沿って三日月形に造られており、「月の港」と呼ばれている。月の港って、なんとロマンチックなことか。もちろん、世界遺産に登録されている。
ガロンヌ川沿いに大きな遊歩道があり、大勢の人が夕刻のひと時を楽しんでいた。
人々は優しく、穏やかな印象があった。何より、垢ぬけている。旧市街はとってもおしゃれだった。(ぼくは3度目か4度目のボルドー、である)
在仏日本人の間では、ボルドーを京都と比較する人が多いが、確かに伝統と文化のあるセンスのよい街なのであった。
ぼくは、三四郎と、遊歩道で小一時間、太陽が沈むのを見送ることになる。さて、明日はどうなることやら・・・。でも、これこそが旅の醍醐味ですね。
※ こういう芸術に反応してしまう父ちゃんなのであった。
つづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。旅の時間って、いいですよね。三四郎もぜんぜん、旅行、大丈夫そうです。ぴったり寄り添って移動中・・・。運転、散歩、人々や文化と出会うことで、心が軽くなります。確かに運転は疲れましたが、いい旅が出来ていますよね、もっといい旅にしなきゃ。
ところで、ボルドーでのんびりしていたら、JALパック・パリの中村さんから「ライブ翌日の辻さんを囲むランチ会、発表になりました」という連絡が入ったのでした。そうなんです。前から計画はあったのですが、5月29日のオランピア劇場ライブの翌日に、ぼくがよく知るレストランで、せっかくだからランチ会をやろうという企画ツアーが水面下で進んでいたんですね。ぼくも顔を出し、トークをやる予定ですので、せっかくパリに来られる皆さま、よろしければ、どうぞ、ご参加ください。JALパックさんに相談をすれば、モンサンミッシェルなどのツアーも・・・。この機会に、ぜひ。
詳しくは、こちらのURLをクリックください。
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それから次の地球カレッジ「文章教室」は、1月29日、日曜日となります。
「エッセイの書き方教室、第1回」。
今回の地球カレッジ「文章教室」は、どうやってエッセイを構想し、実際に書き、また、推敲をしていくのか、についての講座となります。課題応募されたエッセイの中から選ばれた数本のエッセイを、辻仁成が細かく指導、推敲、研磨していきます。
「エッセイ依頼内容」
今年最初の課題は、また一から、食にまつわるエッセイとなります。
「お子さんやパートナー、家族、同居人に日々作る、作ってもらっている、頂いている、ごはん。外食も含め」について、その人生の深部、喜怒哀楽を書いてください。題して、「日々のごはん」です。字数は1000字前後、1500字以内、とします。締め切りは1月22日とさせていただきます。
詳しくは下の地球カレッジのバナーをクリックくださいませ。
それから、来年、2023年5月29日にパリのミュージックホール、オランピア劇場で単独ライブやります。
パリ・オランピア劇場公演のチケット発売中でーす。
直接チケットを劇場で予約する場合はこちらから。
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続いて、父ちゃんのニューアルバム「ジャパニーズソウルマン」はこちらです。無料でも聞けます。ってか、ほとんど無料に近いですので、思う存分楽しんでください。音楽が危機的な状況ですけど、ミュージシャンたちは頑張っています。
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