夜景、海の幸、歴史など、さまざまな魅力であふれる北海道・函館。
飛行機でひとっ飛びに行くのも便利ですが、鉄道で向かうのも、別の楽しみがあります。
札幌から函館に向かう列車に乗ると、車窓から広大な景色が広がり、訪れてみたいスポットもたくさんみつかりました。
移動時間。沿線の景色。おすすめスポット。札幌から函館への鉄道旅で見つけた魅力を紹介します。
320キロをのんびりと行く鉄道旅
5月中旬の晴れた日。
JR札幌駅で「北海道名産 石狩 鮭めし」という駅弁を買て、午前8時43分発の特急「北斗6号」に乗り込みました。
函館駅までの距離は約320キロ。Googleマップで調べると、東京都庁からJR仙台駅(仙台市)までが直線で約300キロ。それと比べると、結構な距離があることがわかります。
車内では、大きな荷物を持った外国人観光客の姿もちらほら見えました。
これから始まる鉄道の旅にワクワクしていると、ついに北斗が前へ進み始めました。
「イランカラプテ」
アイヌ語で「こんにちは」を意味するあいさつの言葉が放送され、車内に響きます。
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苫小牧から海沿いを西に走行
札幌から函館まで、列車によって異なる場合がありますが、途中14の駅を通ります。
最初の見どころは、新札幌〜南千歳駅間の「エスコンフィールドHOKKAIDO」(北広島市)です。
2023年3月に開業した新球場で、プロ野球・日本ハムファイターズの本拠地です。
プロ野球ファンとしては、ぜひ新しい球場で試合を観戦してみたいですね。
その後、北斗は日本有数の工業都市・苫小牧まで南下し、海沿いを西に走行します。
1時間ほどで白老に到着しました。
ぼーっと海を眺める時間
白老駅の近くには、アイヌ文化の復興・創造などの拠点である「ウポポイ」というナショナルセンターがあります。
豊かな自然の中にあるポロト湖のほとりで、アイヌ文化の多彩な魅力に触れることができます。
なお、「ウポポイ」は、アイヌ語で「(おおぜいで)歌うこと」を意味するそうです。
そんなことをスマホで調べながら左側を見ると、大きな海が見えました。
東室蘭までこのような景色が続きますが、ぼーっと眺めていると、日常の喧騒から解き放たれたような気分になります。
波も穏やかで、鳥がプカプカと海に浮かんでいます。まさに至福の時間。この光景をずっと見ていたいと感じました。
「洞爺湖」近くを通る
気持ち的にはあっという間に東室蘭に到着し、北斗は「内浦湾」(噴火湾)の周りをぐるーっと回るように走行していきます。
内浦湾は周囲に活火山が多いことから、噴火湾とも呼ばれています。
Googleマップで自分の居場所を確認すると、広大な湾だということが確認できます。
伊達紋別を過ぎ、洞爺に到着です。 近くには「洞爺湖(とうやこ)」があります。
林野庁によると、洞爺湖は日本で3番目に大きなカルデラ湖で、最大水深は180メートル。透明度が高く、カヌーツアーでは湖底の流木や魚を見ることができるそうです。
2008年に「北海道洞爺湖サミット」が開催され、世界中から脚光を浴びました。全域が「支笏洞爺(しこつとうや)国立公園」に指定されています。
日本一の“秘境駅”
洞爺を過ぎ、長万部(おしゃまんべ)に向かう途中、車内アナウンスがありました。
耳を澄ましてアナウンスを聞いていると、どうやらトンネルとトンネルの間に一瞬だけ「秘境駅」が現れるようです。
ひとまずスマホのカメラを起動し、動画をセット。私は車両左側の座席に座っており、カメラも左側の景色に向けました。
すると、トンネルに入って暗くなったと思いきや、徐々に光が差し込んできます。
その後、数秒ほど青い空が見えましたが、再びトンネルに入って暗くなりました。
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「どこに秘境駅があったのだろう」「もう過ぎた?」
戸惑いながら、撮影した動画を再生してみました。しかし、それらしきものは写っていません。
次に、動画をゆっくり再生させると、一瞬だけ駅の看板のようなものが映り込んでいることに気づきました。
ぶれてしまっていますが、よく目を凝らして見てみると、「こぼろ」と書かれています。
そう、秘境駅とは「小幌駅」のことです。
所在地の豊浦町によると、小幌駅は「日本一の秘境駅」。公共交通機関の駅なのに、行くことが極端に難しい。こういう駅は「秘境駅」と呼ばれています。
もともと列車が行き交うための信号場として発足した小幌駅は、トンネルとトンネルの間のわずか80メートルの限られた空間の中に存在しています。
舗装道路に隣接していなければ、近隣に住民も住んでいません。この駅に行くには、列車に乗るか、船で付近の浜辺に上陸するか、山道を歩くしかないのです。
こうした秘境駅を訪ねることを目的に旅する人もいて、一種のブームとなっています。
乗降客が少ない一方で設備の維持に多額の費用がかかることから、経営が苦しいJR北海道は小幌駅の廃止を検討しました。
しかし、この秘境駅を貴重な観光資源として重視する豊浦町が維持・管理することで存続が決まり、1年ずつ協定を更新しているそうです。
北斗の車内から見えるのは本当に一瞬ですので、初めは気づきませんでしたが、なんだかとてもレアな体験をさせてもらった気になりました。
その後も北斗は、長万部、八雲、森と円を描くように海沿いを進みました。引き続きのどかな海が広がる光景が続きます。全く飽きません。
そして、大沼公園に向かう途中、再び車内アナウンスが流れ始めました。
北海道の「駒ヶ岳」が綺麗に見えます。
様々な角度で駒ヶ岳を見ることができる
地元企業や自治体などでつくる公益財団法人「北海道観光振興機構」の北海道公式観光サイトによると、駒ヶ岳は標高1131メートルの活火山。
山頂まで約1時間で登ることができるため、気軽に楽しめる絶景登山コースとして有名だそうです。
噴火の爆発によって作られた「角」のような峰が特徴的で、山が二つ合わさったかのような形をしていました。とても雄大です。
なお、北斗は駒ヶ岳のそばを南下していくため、様々な角度で駒ヶ岳の姿を見ることができます。
大沼と駒ヶ岳は国の特別保護区域
大沼公園も素晴らしい光景が広がっています。
湖の大沼周辺は1903年から北海道の道立公園として自然が守られ、公園施設が整備されてきました。
1915年に、三保の松原(静岡)、耶馬溪(大分)とともに「日本新三景」の一つに選ばれ、58年に道立大沼公園が13番目の国定公園の指定を受け、大沼と駒ヶ岳は国の特別保護区域になりました。
大沼という地名は、アイヌ語の「ポロ・ト」からきており、「ポロ」は「大いなる」、「ト」は「湖沼」や「水たまり」を意味するといいます。
車窓からも、青々とした木々と綺麗な湖に思わずうっとりとするような光景が見えました。
五稜郭
さて、もうそろそろ函館に着きます。
五稜郭は、ヨーロッパの「城塞都市(じょうさいとし)」をヒントに作られた五角形の建造物です。
戊辰戦争の最後の戦いとなる箱館戦争の舞台となり、旧幕府脱走軍が拠点としていたことでも知られています。
1952年に北海道唯一の国指定特別史跡となったほか、「五稜郭と箱館戦争の遺構」として北海道遺産にも指定されており、函館を代表する観光地になっています。
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函館に到着
五稜郭を出ると、まもなく函館に着きました。
札幌を午前8時43分に出発し、函館には午後0時35分頃に到着しました。4時間弱の長い鉄道旅でしたが、見どころがたくさんあり、飽きることはありませんでした。
特に噴火湾の周辺を走行している間は、「この駅で降りたい」というスポットが点在し、次の旅行先のことで頭がいっぱいになりました。
車窓から見える光景は雄大で、豊かな海や緑が日々の疲れを癒してくれました。
そして、終着の函館ではおいしい海の幸をたくさん味わうことができますし、北海道三大温泉郷のひとつに数えられる湯の川温泉もあります。
札幌に行く機会があれば、ぜひ鉄道で函館まで足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。北海道らしい絶景を見ることができます。
逆に、東京や東北方面から函館(新函館北斗駅)まで新幹線で行き、さらに札幌まで在来線で行く旅もお勧めです。
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